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Plastic Treeの残した妖艶な世界とスモークが空気にとけた頃、舞台に登場したのは爽やかな笑顔とショートヘアが愛らしい、宇宙まお。リハーサルから、とっても楽しげに微笑みながらギターをプレイしていた彼女。今回が、ROCK IN JAPAN FES.初登場ながら、気負った雰囲気も緊張でかちこちになってる雰囲気もなし!

「宇宙まおです! (テント入口に向かって)走って、走ってー」と観客に呼びかけて、「暑苦しい恋の歌を歌います、“穴だらけ”」と演奏スタート。どろんと濃ゆい、こぶしがまわりそうな昭和歌謡調のロック・チューンだが、中性的というかチャイルディッシュというか、つるんとなめらかな彼女の歌声のために、とってもポップな曲に聴こえてくるから不思議である。

続いては、エレキギターを背負って、ミディアム・テンポの“バイバイ”を熱唱。こちらもセンチメンタルなメロディがきらりと光る。しかし、MCでは「数あるステージのなかから、WING TENTに来てくれて嬉しいです。わたしは初登場なんですけど、これまではそちらで観客として観ていたから、ここに立っているのが信じられない! 今日は楽しみましょう」と無垢な表情もちらりと見せる。

アコースティック・ギターに持ちかえて、次にプレイしたのは、“みじめちゃん”。ほっこり陽性のカントリー調ロックを、バンド・メンバーとしっかりアイコンタクトを交わしながら奏でる。ほがらかなリズムで盛り上げていく曲だが、歌われているのはトホホな“僕”の情けない気持ち、そして、そんな“僕”が空回りしながらも歩んで行くという、ほろりとくるようなストーリー。続く、“満月の夜”の根底にあるのも「哀」の色。彼女の無垢なヴォーカルはしかし、部屋の隅に小さく丸まって、哀しみで震える不器用な“僕”の手を掴んで明るいところへと連れだしてくれるような感覚に溢れている。

「みなさん、熱いけど大丈夫ですか? わたしはキツイのでこれを巻かせてもらいます」と首にタオルを巻いて、「次は新しい曲をやります。“1234”という曲なんですけど、これには“1234”体操があって――簡単です! 膝を曲げのばしするだけです(笑)。じゃ、いきます」と、ハンドマイクで歌いながら、“1234”体操も披露。『みんなのうた』を思わせるキャッチーさで、観客の心をがっちりとらえる。ラスト、手拍子が湧き起こるなかで披露された“ロックの神様”。神様っていう言葉にはちょっと仰々しさを感じてしまうけど、宇宙まおがそれを歌うと、いい子にしてた子どもにプレゼントを贈るサンタさんかのように、そこにポップで温かいニュアンスが生まれる。これも、彼女のキャラクターなのだろうか? 最後の最後まで、爽やかな笑顔と歌声で観客を魅了して、初登場のステージを締めくくった。(吉羽さおり)