佐藤千明(Vox./Key.)がやたら昂った声を発しながらポーズを決めて「イエーッ!! どうしても歌いたかったから、この曲を歌うわ!」と告げ、《時代は億千万の〜》と“2億4千万の瞳”を歌い出す。が……歌えてない。「ララララ……ジャパーン!!」と、それが言いたかっただけみたいだ。ひとまず歓声を巻き起こして赤い公園のパフォーマンスがスタート。9月にリリース予定のシングル曲“のぞき穴”。いきなりギターにトラブルが起こってしまったようで、ドタバタしたガレージ・ロックンロールが更にスカスカになってしまっているが、メンバー全員がやたらに楽しそう。いやしかし、音が整ったときの、テクニック云々よりも一瞬で狂気にタッチしてしまうような爆発力は凄まじい。“ナンバーシックス”から意外にもダンサブルな展開をみせて、SEASIDE STAGEのオーディエンスの頭上にスウェイが広がる“今更”へと繋ぐ。「最初ちょっと間違えたんで、途中から来た人が正解です。え? 何か言った? めっちゃ知り合いだったわ。全然アガらない人だった。いやでも、初フェスじゃないけど、本当に出たかったフェスなんで、これやってもいいですか!?」と耳をそばだてるポーズを取る佐藤。が、そこですかさず“塊”のオープニングの囁くようなコーラスが差し込まれてしまうのだった。甘美な歌声とメロディに陶酔すれば良いのか、叩き出される爆音に興奮すれば良いのか、呆気に取られていれば良いのか分からないけれど、なんか凄い。そして女子4人、誰よりも先に陶酔と興奮と呆気に到達してしまうのが、他でもない彼女たちメンバーなのである。エクスペリメンタルな美しいギター音響で届けられる“透明”を経て、「次の曲は大合唱の曲です! ヴォーカルの言うこと信じろよ。他に何を信じるって言うんだ。アルバムに入っていない曲!」と“くい”。ほとんど予測不可能な、びっくりするような展開だし、まず合唱も無理だろうこの曲は。「あと1曲です!」「えー!?」「よく出来てるな。今日は暑い中、わざわざSEASIDE STAGEまで歩いて来てくれてありがとうございます! 一緒にふやけて帰りましょうー!!」と“ふやける”を披露する。繊細な、美しい歌が伝っていったと思ったら、この日最大級の凶暴なノイズ地獄が顎を開いて待っているのだった。まるで嵐のようにやってきて、去って行ったけれど、なにか中毒になってしまいそうだ。もっと観たいぞ、赤い公園。(小池宏和)
赤い公園 のROCK IN JAPAN FESTIVALクイックレポートアーカイブ