【インタビュー】1stアルバム『charme』は、liaが10代最後に刻んだ鮮やかな「暴動」──shallmが多彩なバンドサウンドで描き出すポジティブな未来図に迫る

【インタビュー】1stアルバム『charme』は、liaが10代最後に刻んだ鮮やかな「暴動」──shallmが多彩なバンドサウンドで描き出すポジティブな未来図に迫る
shallmは19歳のボーカリスト・ソングライターであるliaが、多彩なロック・ポップのバンドサウンドに乗せて力強く深みのある歌声を響かせるバンドプロジェクトである。時に青春の衝動や怒りも滲ませながら、決して狭窄的な視点ではなく、常にその先にある感情や景色を文学的な筆致で描くのも大きな魅力のひとつだ。liaの音楽のルーツにボカロがあることも大きく影響しているのだが、どの楽曲も「言葉」がとても大切に紡がれている。そんなshallmの待望の1stフルアルバム『charme』が完成した。すべての楽曲がリード曲となり得るような、濃密で多彩でエモーショナルな作品である。リード曲“暴動”などは、まさしくliaが10代最後に刻みつける鮮烈なライオットだ。ここから始まるshallmの進撃。その目的地はどこにあるのか。liaの音楽的ルーツ、そして『charme』の制作背景をひもときながらshallmが目指す場所を探る。

インタビュー=杉浦美恵


部屋でひとり書いた曲をみんなの前で歌うということがめちゃくちゃ面白くて。人前で話すのは苦手なんですけど、曲ならなんでも言える

──1stフルアルバム『charme』は、liaさんの10代最後にリリースするアルバムですが、まずliaさんが音楽に向き合うようになったきっかけからお聞きしたいです。幼少期に音楽に触れた原体験は覚えていますか?

まず、歌うことが好きだというところから音楽に入っていきました。幼い頃に初めてカラオケに連れて行かれたとき、楽しすぎて「帰りたくない!」って泣いていたという話をあとから親に聞きました(笑)。それくらい歌が好きだったみたいで、そのあとも何度も家族でカラオケのフリータイムにフルで入ったりしていました。

──よく歌っていたのは?

あまり覚えていないんですけど、ボカロにはまったので、ボカロ曲はいっぱい歌っていました。カラオケにもボカロ曲がいろいろ入っていたので。

──ボカロとの出会いはいつですか?

家ではだいたいマイケル・ジャクソンビートルズみたいな洋楽が流れていて、英語だから何を歌っているかはわからないけど、ずっといいなと思っていて。そこから音楽ってなんなんだろう?と興味を持ち始めたんですけど、家にあったPCで初めてボカロを聴いたとき、「なんだこの音楽は!」と衝撃を受けました。それからボカロにハマりましたね。

──具体的にはどういうアーティストの楽曲を?

カゲプロ(カゲロウプロジェクト)がドストライクでハマって。生バンドというか、全部生の楽器の音なのがすごくいいなって。メロディックなラインと楽器が合わさるのがかっこよくて、それでバンドをやりたいなと思いました。

──ルーツ的にそこでliaさんの方向性が固まった感じもしますね。自分で曲を作ろうと思ったのはどういうきっかけからですか?

学生時代に組んだバンドで、「誰が曲作る?」ってなって。やったことないけど作りたいなと思っていたので、そこから独学で作り始めました。根拠のない自信があって(笑)。曲を聴いていても、身のほど知らずですけど「私だったらもっとこうするかも」とか考えていて。でもいざやってみたらめちゃめちゃ難しくて。だけどめちゃくちゃ楽しくて。そこが「音楽で生きていきたい」と思うターニングポイントだったかもしれません。

【インタビュー】1stアルバム『charme』は、liaが10代最後に刻んだ鮮やかな「暴動」──shallmが多彩なバンドサウンドで描き出すポジティブな未来図に迫る

──曲作りが楽しいという感覚は、自分の中からやりたいことがどんどん出てくるという感じ?

そうですね。部屋でひとり書いた曲をみんなの前で歌うということがめちゃくちゃ面白くて。人前で話すのは苦手なんですけど、曲ならなんでも言えるというか。これはすごく自分に合っていると思えたし、楽しいなって思いました。

──昨年3月には、shallmとしての初のオリジナル曲“夢幻ホログラム”がリリースされて。

“夢幻ホログラム”は久しぶりに作った曲だったんですけど、世に出す1曲目ってやっぱり気が張るじゃないですか。私、自分の曲があとからどんどん納得できなくなってくるタイプで、今だったらもうちょっと違う形になったかもと思ったりしつつ。でも歌詞は稚拙な言葉ですけど、すごく自分の気持ちが出てるなあって思います。自分の曲をYouTubeに出すっていうのも人生初だったので、コメントをもらったり、反応が返ってくる喜びがありました。


私が音楽に感動したみたいに私の音楽で誰かを感動させられたら、生まれてきた意味があるなと思えたんです

──本格的に音楽の道に進んでいこうという決断はどのタイミングでしました?

進路選択で迷ったときに、大学に行って就職するみたいなことも考えたし、音楽以外にも普通に興味のあることがあったから、そっちで生きていってもいいなと思う自分もいました。でもやっぱり音楽に出会ったということは私にとってはすごい大事件で、こんなにハマったことはほかにないので、やっぱりこれに人生を懸けていいんじゃないかという思いもあって、悩んだ結果、やはり音楽の道に決めました。大袈裟かもしれないですけど、私が音楽に感動したみたいに私の音楽で誰かを感動させられたら、生まれてきた意味があるなと思えたんです。でも現実が厳しいこともわかっていたので、すごく悩みましたけどね。

──自分の命がいちばん輝く場所を選択したということですよね。今その道を諦めたら一生後悔するというか。

そう思いました。これまでボケーっと生きてきたので、このままボケーっとしていたらきっと後悔するだろうなと思うし、やっぱり目標を持って歩くほうが楽しいかもしれないと思って。

──その目標とはどんなもの?

目標っていうか、私「海賊王」になりたくて(笑)。曲の中でもいつも戦っているし、何かが足りないとか、満たされない感じがしていて。だから何かを誇れる王様になりたいし、誰かに何かをあげられる人になりたいです。

──いいですね、海賊王。だから、仲間と一緒に音を紡いでいくバンドサウンドに惹かれるというところもあるのかも。ボカロがルーツにあるとしたら純粋なるソロプロジェクトでもよかったんでしょうけど、liaさんはやはりバンドサウンドを求めるんですよね。

そうですね。バンドが好きっていうのももちろんあるんですけど、やっぱりバンドってひとつの生き物みたいでもあるし、なんか船に乗せてもらってる感じがして、バンドを背負って歌うのはすごく力が入るし、自分に合ってるなって思います。

【インタビュー】1stアルバム『charme』は、liaが10代最後に刻んだ鮮やかな「暴動」──shallmが多彩なバンドサウンドで描き出すポジティブな未来図に迫る

──そして今回、初のフルアルバムを作るにあたり、どういうものにしたいと考えていましたか?

やっぱり、いつかは「名盤」って言われる作品にしたいなという意気込みで作りました。ここから、もっともっとやれるっていうところをどんどん見せていきたいです。

──『charme』は全曲がリード曲になり得ると言ってもいいほど濃密な1stアルバムで、特にリード曲“暴動”にはアグレッシブなshallmの真髄を見たような気がしました。

嬉しいです。アルバムを作るという構想は1年ぐらい前から頭にあったんですけど、やっぱりタイアップで曲を作ることもあったので、違う点と点を、どう繋げてアルバムにするかというのがすごく難しくて。それを考え始めたのが今年の5月ぐらいなんですけど、やっぱり最後はリード曲を作ってまとめようと思って、“暴動”を作りました。

──イントロからすごくハイパーなロックサウンドで、ライブでの盛り上がりもすごくイメージできる曲。とにかく歌詞がいいですよね。サウンドと歌詞が見事にリンクして、《気取ったアドリブを残してやれ》からのギターソロだったり、ラストの《決まった演出を出し抜いて/見たことない感動を僕にくれ》のラインなどは、liaさんが今まさにshallmで表現したいことを突きつけている感じがして。liaさんからの宣戦布告のような1曲でした。

すごい! もう全部その通りです(笑)。リード曲を作るとなったらプレッシャーがすごくて、半端なものは出せないし、でも時間もないしで、ちょっと作っては違う、またちょっと作っては違うって、残骸みたいに曲のかけらがたくさん積み上がって、最終的にこれが出てきたという感じでした。本当にしんどかったけど、楽しかったです。


次のページ自分の性格から言えば暗いというか捻くれてる曲が好きで。最近出している曲もどこか少し男らしいというか。“暴動”も、かっこいい曲を作りたいと思って書いた曲でした
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