下屋先生(松岡茉優)が直面した産科医にとって一番つらい出来事。そこで下した決断とは?ドラマ『コウノドリ』第6話レポート

TBS系ドラマ『コウノドリ』、第6話は産科医である下屋加江(松岡茉優)が、ピンチヒッターでこはる産婦人科医に当直勤務した際に、神谷カエ(福田麻由子)という名前も年齢も同じ妊婦と出会うところから始まった。妊娠34週の切迫早産で、その病院唯一の入院患者である彼女は、下屋が病室を訪ねると「いつまで入院してなきゃいけないんですか?」と泣いている。孤独と不安を抱えた様子に「私が普段勤務しているペルソナ医療センターには神谷さんと同じ切迫早産で入院してる人、たくさんいるんです」と励ます。カエは赤ちゃんを「さくら」と名付けようと思っていること、下屋には上司にサクラという先生がいること、お互いのことを話しながら意気投合するふたり。出産後にカエの結婚式にも行く約束をし、「切迫早産の治療は、ゴールがあります。まずは出産というゴールに向かって、一緒にがんばりましょう」と下屋は病室を後にした。しかし喋っている時のカエの手の震えなど、少し落ち着かない様子が気になり、こはる産婦人科の院長に「切迫以外は問題ないですよね? 例えば……甲状腺とか」と投げかける。「週明けに採血して調べてみるよ」という返事を貰い、ホッとした表情で当直勤務を終えた。

しかしペルソナに戻った下屋のもとに緊急搬送されてきたのは、カエだった。搬送中の心肺停止という危険な状態に、動揺を隠せない。「お母さんも赤ちゃんも、助けるよ!」という鴻鳥サクラ(綾野剛)の言葉で、救命科の加瀬宏(平山祐介)が母体の蘇生を試みながら、赤ちゃんは死戦期帝王切開で出産。生まれたばかりの赤ちゃんも心停止という緊迫した状況の中、「神谷さんのゴールは、ここじゃないでしょ!」と叫ぶ下屋。新生児科の処置により、やがて赤ちゃんは産声を上げたが、カエの心拍は戻らない。「さくらちゃんが呼んでるよ! お母さんって呼んでるよ! お願い戻ってきて!」――下屋をはじめ、産科も救命科も一丸となって母体を救おうとしたがその願いは叶わなかった。

カエの死は、甲状腺クリーゼによるものだった。下屋は新生児科の白川領(坂口健太郎)に「何であの時、検査を強く勧めなかったんだろう。私のせいだよ」と後悔を口にする。「お前のせいじゃない」と白川は否定するが、こわばった表情で首を横に振る。救命科の部長に今回のことを「見落としじゃないの? 君たち、危機感足りないんじゃないの?」と言われたことも影響したのか、検診に訪れた妊婦全員に甲状腺の検査をはじめる。見かねたサクラは、下屋にしばらく休みを取るように勧めた。四宮春樹(星野源)も「立ち直ったふりをして妊婦の採血しまくって。自分が神谷さんの死を乗り越えたいだけじゃないのか。甘ったれんな」と。サクラは「どんな産科医になりたい? その答えが見つかったら、帰ってこい。待ってるから」と、母体死亡が産科医にとって一番辛い出来事であることを知っているからこそ、それぞれの言葉で下屋を励ました。

休んでいる間に助産師の小松留美子(吉田羊)に連れ出されてBABYのコンサートに出かけた下屋。ピアノの演奏を聴きながら「やっぱり私、産科に帰りたいです」と泣きながら答えを出した。しかし下屋のこの決断は意外な方向に舵を切る。休み明け、サクラに「救命に行って全身管理を身に付けたいんです。何かあった時に、お母さんと赤ちゃん、両方を救える産科医になりたいんです」と告げる。サクラは「患者さんをなくしてしまったこと、乗り越えることはできない。悔しいことも嬉しいこともひとつひとつ胸の中に積み重ねて、僕たちは医者として進んでいくしかない」としながらも、「これが私の乗り越え方です」と言う下屋の気持ちを汲んで「行って来い、そして強くなって帰ってこい」と救命科への転向を希望する彼女の背中を押した。

周りに頼らずに自分の判断でもっと成長していきたいという下屋のがんばりが光った第6話。それを色んな形で見守ったり励ましたりする仲間たちの姿も印象的に描かれた。何でも話し合える研修医時代からの仲である白川との絆はもちろん、今回は研修医の赤西吾郎(宮沢氷魚)が下屋にパンを差し入れする姿が何だか愛らしかった。そして何より、四宮が「救命でも失敗しまくって叱られてる様子が目に浮かぶ」なんてキツいことを言いながらも、好物のジャムパン(しかもホイップクリーム入り)を差し出して「どんなに忙しくても、食事は取れよ。それでなくても良くない頭の回転が、さらに悪くなるからな」と送り出すシーン、彼は相変わらず真顔だったが後輩への愛に満ちていた。救命科の医師たちの下屋への風当たりは強いし、ますます厳しい毎日が待ち受けているに違いない。これからまた波乱に満ちた展開になりそう……と思った最後のシーンで小松が腹痛を訴えて倒れた。大きな盛り上がりを見せるドラマ『コウノドリ』、ますます目が離せない。(上野三樹)
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