これを待っていた。第二期ブラック・カントリー・ニュー・ロード(以下BC,NR)初のスタジオアルバム『フォーエヴァー・ハウロング』は、有機的に変化し続けるバンドとしての彼らの鮮やかな最新形が存分に味わえる素晴らしい一枚だ。エネルギッシュで温かく、壮大でエモーショナル。2020年代UKインディにおける、ひとつの到達点である。
第二期というのはもちろん、かつてグループの中核を担っていたアイザック・ウッドが脱退して6人体制になってからのことだ。その大きな変化にもかかわらず、すべて新曲でツアーをおこなった成果はライブ盤『ライブ・アット・ブッシュ・ホール』(23年)に収められているが、それらの楽曲はメンバーそれぞれが作曲したものを急いで集めたものだった。ライブでそれらの楽曲を磨きつつ、新体制のアンサンブルを確立していったのがこの3年ほどのBC,NRだったということだ。
そして、4月4日のリリースが発表された『フォーエヴァー・ハウロング』はその間の試行錯誤や実践を見事に結実させた作品になった。アルバムのほとんどの楽曲とメインボーカルをタイラー・ハイド、ジョージア・エラリー、メイ・カーショーの女性メンバー3人で分担しており、それぞれの楽曲が個性を持ちながらも統一感のある仕上がりだ。サウンドとしては多彩なアコースティック楽器を主体とし、フォーク、バロックポップ、オルタナティブをミックスしながらオーガニックでダイナミックなアンサンブルを実現。プロデューサーにジェームス・フォードを迎えていることからも、スタジオアルバムとしての完成度を高めることを目指したことが察せられる。バロック風のイントロで始まるリードシングル“ベスティーズ”は、どこかキュートな響きの歌とパワフルな演奏がしっかりと抱擁し合うような一曲で、アルバムの幕開けにふさわしい。そこで歌われるのは、BC,NRにおいてもっとも重要なテーマであり続けてきた友情についてだ。
まさに揺るがない友情によって自分たちの道を切り拓いてきたBC,NR。彼らがいかにしてこの傑作にたどり着いたのか、引き続き追っていきたい。(木津毅)
ブラック・カントリー・ニュー・ロードの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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