EMI ROCKS @ さいたまスーパーアリーナ

清 竜人 pic by 橋本塁
MASS OF THE FERMENTING DREGS pic by 有賀幹夫
Base Ball Bear pic by 橋本塁
雅-MIYAVI- pic by 有賀幹夫
HIFANA pic by 橋本塁
Fire Ball with Home Grown pic by 有賀幹夫
布袋寅泰 pic by 橋本塁
9mm Parabellum Bullet pic by 有賀幹夫
ストレイテナー pic by 橋本塁
ACIDMAN pic by 有賀幹夫
東京事変 pic by 橋本塁
吉井和哉 pic by 有賀幹夫
EMIミュージック・ジャパン設立50周年を記念して開催されたEMI ROCKS。ここまで大きなイベントをEMI主導で開催するのは初めてらしく、それ故に、スタッフ陣も分からないことだらけで苦労したらしい。というのは、当日会場で渡されたオフィシャルパンフレットに綴られていた。にもかかわらず、ACIDMAN/9mm Parabellum Bullet/清 竜人/ストレイテナー/東京事変/HIFANA/Fire Ball with Home Grown/Base Ball Bear/MASS OF THE FERMENTING DREGS/雅-MIYAVI-/吉井和哉という、いきなり豪華なラインナップ。ステージ転換中にはビートルズやクイーン、ミック・ジャガーやレディオヘッドなど、押しも押されぬロック・レジェンドたちの代表曲も数多く流され、まさにロック尽くしの贅沢なイベントが開幕した。

EMI主催のオーディションREVOLUTION ROCKグランプリ受賞者=股下89がオープニング・アクトを務めたあと、本編トップバッターの清 竜人が登場! その澄み切った歌声と流麗なピアノの旋律で、オーディエンスの心を鷲づかみにしていく。“ワールド”や“痛いよ”などのしっとりとしたナンバーから“ぼくらはつながってるんだな”などのファンキーな楽曲に至るまで、2万人の聴衆を前にしても臆することなく伸びやかな羽を広げていくさまは、とにかく爽快。間違って「こんばんは……あ!こんにちは」と挨拶するなど初々しい所作はいまだ抜けないけれど、その音楽は確かにスケールの大きなものに進化しているようだ。
「せーの! ジャーン!」と、しょっぱなから一撃を食らわしてフロアを痺れさせたのはMASS OF THE FERMENTING DREGS。“ゼロコンマ、色とりどりの世界”“かくいうもの”など、ドシャメシャのドラムとギター・リフがスコールのごとく吹き荒れるナンバーを次々と投下していく。男性顔負けの爆発力でフロアを制圧しながらも、黄色いフレアワンピースをひらひらさせてクリーンな歌声を響かせる宮本奈津子(B/Vo)は、たまらなくセクシー。「名前だけでも覚えていってくれれば嬉しいです」と控えめに挨拶していたけれど、彼女たちの度肝を抜くパフォーマンスは確かにオーディエンスの心に刻まれたはず。
登場SEから四つ打ちナンバーを連発してフロアを揺らしたBase Ball Bear。“十字架You and I”や“kimino-me”などなど、多彩にコードやリズムが変化していく怒涛のサウンドの上で、小出の甘い歌声が疾走していく快楽とスペクタル感といったら! 「今日はEMI50周年のイベントですが、Base Ball Bearはデビュー5周年です」とEMIとのなれそめを語ったあとは、メジャー・デビュー曲“Girl Friend”と“Electric Summer”を連打してフロアを沸かせまくっていた。

この日、一番の驚きだった人も多いだろう。と思えるぐらい圧巻のアクトを見せてくれたのが雅-MIYAVI-。ピックを持たずにエレアコをしばきまくる雅-MIYAVI-と、バスドラとスネアとハイハットとシンバル1枚のみのBoBo、この2人だけによる贅肉一切ナシのライブは、まるで何かの修行を見ているような切迫感。かと言って決して取っつきにくいわけでなく、超絶ビートが核弾頭のように走りまくるサウンドは、いつまでも身を委ねていたくなるほど気持ちいい。雅-MIYAVI-本人も、ステージから飛び降りてフロアを走り回ったりしながら終始アグレッシヴに観客をアジテートしていた。
そんな雅-MIYAVI-の壮絶なライブから一転、遊び心あふれるダンスホールを生み出したのが、KEIZOmachine!とジューシーによるブレイクビーツユニット、HIFANA。卓前で巧みにポジションを替えながらビートを繰り出していく2人の躍動感あるパフォーマンス、サウンドとリンクして展開する映像……と、目にも楽しいアクトで会場を熱狂の渦に引きずり込んでいくさまは、とにかく痛快! ライブ中盤にはニュー・アルバムにも参加している鎮座DOPENESSが乱入し、会場をさらにお祭りムード一色にして30分弱のステージを終えた。
一方、濃厚なレゲエの空気で会場を染め上げたのが、Fire Ball with Home Grown。ステージ前方にメンバー4人が一直線に並んで男臭いライムをブチかましていくさまは、もうそれだけで壮観。桂三枝の「いらっしゃーい」コールでフロアを沸かせたかと思えば、「世界中が争ってる中、言わしてもらうわ!」と熱いMCを展開したり、ジミー・クリフのカバー“You Can Get It If You Really Want”でハンドクラップを誘ったり……と、喜怒哀楽のすべてを大放出したようなアクトで会場をひとつにしていくさまは、感動的だった。

ここでインターバルタイム。と思いきや、ステージ左右のビジョンに何やら意味深な映像が流される。次々と映し出される文字を読み進めていくと、今年6月に閉鎖されたEMIのレコーディング・スタジオ、TERRAに捧げる楽曲を、野田洋次郎(RADWIMPS)、吉井和哉、大木伸夫(ACIDMAN)、ホリエアツシ(ストレイテナー)、フジファブリック、the telephonesらが集結してレコーディングしたという告知が! 「寺子屋」というユニット名で着うた配信などが行われることも発表され、会場から悲鳴のような歓声が沸いた。ちなみに少しだけかかった楽曲は、清々しい疾走感に満ちたロックンロール。

続いてはSpecial Secret Guestの登場。サプライズを期待した観客で、アリーナの後ろからスタンドの天井までパンパンに膨れ上がった会場に颯爽と現れたのは、布袋寅泰!! 白いスーツに白いエレキという、眩しいほどにスターオーラ全開の出で立ちで、“仁義なき闘い”を投下! その後も“バンビーナ”や“Poison”など名曲中の名曲のオンパレードでフロアを大きく揺らしていく。ちなみにバンドを構成するのはベース 井上富雄、キーボード 小島良喜、ドラム 中村達也という、超豪華メンバー。猛獣の爪のような鋭さを放ってトグロを巻いていく布袋のギターを中心に、もの凄い音圧で聴き手の耳に襲い掛かってくるサウンドには、思わずひれ伏したくなってしまうほどの風格が感じられた。ちなみにEMIとの付き合いは今年で25年目になるという布袋さん。「こうやって若いバンドと共演できることを嬉しく思います」と、瑞々しいエネルギーを爆発させてプレイしている姿が印象的だった。

後半戦への突入を高らかに告げたのは、9mm Parabellum Bullet!! “Discommunication”や“Vampiregirl”など、もはやライブの必殺ナンバーを連打! もちろんフロアはオイコールの嵐である。そんな中で目を惹いたのは、長く伸びた髪を後ろに束ねてギターを掻き鳴らしていた滝(G)。何と言うか、宮本武蔵みたいな鬼気迫る佇まいである。「昼からココで大きな花火がバンバン打ちあがるのを見てきたわけではあるが、僕たちも花火を打ち上げて帰ろうと思います。粉々になろうぜ!」と叫んだあとは、“Supernova”や“The Revolutionary”など、これまたキラーチューンの連発でフロアを激震。ライブを重ねるたびに臨界点を塗り替えていくような、スリリングなライブはこの日も健在だった。
次はストレイテナーの登場……と思いきや、ここで大きなサプライズが。なんとRADWIMPSの野田と桑原が登場し、アコースティックで“有心論”をプレイ。突然の登場に驚くオーディエンスを前に、美しい歌声とアコギの音色を響かせて嬉しそうにステージを去っていった。
こうして涼やかな風が吹き抜けた会場に、再び灼熱の火を灯したのがストレイテナー! “KILLER TUNE”や新曲“VANISH”を放った序盤から、美しい結晶をそっと取り出したようなディープなナンバーを経て、“Melodic Storm”で一気に銀河の彼方へと上り詰めていく全6曲のセットには、彼ら特有の緊迫感やドラマ性がギュッと凝縮されていて、恍惚とさせられるほどだった。「最後に僕たちがEMIにやって来たときによくやっていた曲を演奏します」とプレイされた“ROCKSTEDY”でシンガロングが沸き起こった光景は、本当にロマンチックだった。
続いてフロアの熱気をさらに高めるロックを爆発させたのが、ACIDMAN。青い炎がふつふつと燃えたぎるような興奮をストレイテナーが生み出していたとしたら、ACIDMANの場合は、真っ赤な火ダルマが高速で駆け抜けていくような高揚感。次々と放たれる轟音と大木(Vo/G)の熱を帯びたボーカルに、フロアからは絶えず拳が上がり続ける。“赤燈”に続いて12月1日に発売される8枚目のアルバム『ALMA』の紹介をした後は、そのタイトル・チューンをプレイ。心の機微から宇宙的な広がりまで描き切ってしまうようなスケールの大きなサウンドが、フロアを幻想的な世界へと導いていた。

いよいよEMI ROCKSも終盤に突入。メンバー揃いのワンピースで登場したのは、東京事変! プラチナブロンドのショートカットの椎名林檎(Vo)以外は、髪を立てたり月桂樹のような飾りを頭に付けたりしていて、なんだか自由の女神みたいな出で立ちだ。プレイされたのは、“OSCA”“能動的三分間”“透明人間”などなど、シングル曲連発の贅沢なセットリスト。なかでも、拡声器から放たれるパワフルなボーカルと目まぐるしいサウンドが、破綻してしまわんばかりの勢いでせめぎ合っていた“FOUL”や、フロアを手の波で覆いつくした“キラーチューン”のカタルシスは最高だった。
そして、ヘッドライナーの吉井和哉がステージに登場! 1曲目は何だろう?と思っていたら、なんといきなりダウンタウン・ブギウギ・バンドの“港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ”を披露。これには場内呆然&大爆笑で、《アンタ あの娘の何なのさ!》を連発する吉井は、ひたすら楽しそうだった。その後は、新曲“アシッドウーマン”のようなハードで疾走感あるナンバーや、“TALI”のような「吉井和哉のコア」を思わせるようなヒリヒリとした憂いを含んだナンバーを次々と繰り出しながら聴く者すべてをロックンロールの深遠へと引きずり込んでいく。「新曲です」として披露された“おじぎ草”のどっしりとした響きはとても官能的だった。ラストは「飛ぶぞー!!」というシャウトに続いて“PHOENIX”“ビルマニア”を畳み掛けてフィニッシュ。まさにロックの真髄を見せつけるような圧倒的なアクトの華々しい幕切れに、しばらくフロアの歓声が鳴り止むことはなかった。

吉井がステージを去った後には、この日の会場の様子を捉えたスチール写真とともに、“See You Next Year”という文字がビジョンに大映しに。EMI50周年を機に産声を上げたこのイベントが、今後どのような進化を遂げていくのか。まずはその動向を、今後も見守りつづけていきたいと思う。なお、全アーティストのセットリストはEMIのモバイルサイトで公開されているので、そちらも併せてチェックを。(齋藤美穂)