ミュージシャンに惹かれる理由を挙げるならば、「曲が好きだから」なのは当然だが、「生き方に憧れるから」も多くの人にとって大きい要素ではないだろうか。そんなことをこのEPを聴いて思った。ロックバンドとして生き続ける意志に満ち溢れている“Steer This Band”、ラテンテイストを添加しつつ痛快なダンスサウンドを躍動させる“Dirty Party”、音楽にときめく気持ちが決して色褪せない様が伝わってくる“Ashtray”など、結成23年目に突入した
TOTALFATの「バンドって最高!」という確信の鳴り響かせ方が猛烈に気持ちいい。“Steer This Band”の《正しさの確証じゃなくて/幸せの可能性》は、本作の象徴的フレーズだと思う。音楽のやり方には様々な形があるが、合理性という数値化しやすい尺度が示す「正しさ」では測れない「これをやっている時が圧倒的に幸せなのです」という感覚が彼らの原動力であることが、この曲を聴くと本当によくわかる。言い訳をせず、選んだ道を楽しくすることをひたすら諦めない人間はかっこいい。TOTALFATは、そういう姿を存分に感じさせてくれるバンドだ。(田中大)
『ROCKIN'ON JAPAN』7月号より