未来を指し示す2年の軌跡

帝国喫茶『帝国喫茶』
発売中
ALBUM
羽化の瞬間が刻まれた作品と言っていいだろう。自主制作音源EP『開店』の再録曲や今年6月にリリースされた『まちあわせ』からの3曲を含む、全12曲を収録した1stフルアルバム。前半7曲はバンドが過去に積み重ねてきた音楽が、後半5曲には過去を踏まえたうえでより進化していこうとする気概溢れる楽曲が並ぶ、2本立てのような内容である。

先行配信されたパンキッシュな“ガソリンタンク”は歌詞、演奏、歌唱の隅々から同世代の先頭に打って出るような気合いを感じさせ、甘くロマンチックな“恋する惑星”は杉浦祐輝(Vo・G)のピュアな歌声が爽やかに響く。注目すべきは杉浦が作詞作曲を手掛けた2曲。ソロ弾き語り曲のバンドバージョン“部屋の中で”は4人の演奏が彼の真摯な思いにさらなる説得力を持たせ、ボーカリストとして、音楽家としてのスタンスを歌い上げた“星のマーチ”は、優しいアルペジオの弾き語りから展開するバンドサウンドが優しくドラマチックに鳴り響く。ひとりぼっちの部屋の中から、君の街とつながる広い空へ――今作で4人は果てなき未来へ飛び立った。(沖さやこ)