泥くさく歌い続ける「もう一回」

10-FEET『Re方程式』
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映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌“第ゼロ感”は、2023年を象徴する一曲となった。人気アニメ映画のタイアップだからというより、90年代から愛され続ける『SLAM DUNK』の訴求力と、同じく90年代からロックシーンを生き抜いてきた10-FEETの地力が呼応して掴み取った現象だと思う。さまざまな人生に寄り添う10-FEETの姿勢は、その舞台がドラマでもアニメでも現実でも変わらない。ドラマ『フェルマーの料理』に書き下ろされた新曲“Re方程式”もまた、作中に生きる人物と並走しつつ10-FEETの生き様を叫ぶロックナンバーだ。「数学と料理」というテーマに則って「方程式」というワードを盛り込みながら、《咲いて枯らしてはもう一回 最初からもう一回》《それでも明日をもう一回》と泥くさく前を向き続ける想いを歌う。挫折を乗り越えて新しい道を行く主人公と、ヒットに胡座をかくつもりは毛頭ないという10-FEETに共通する意志表示にも受け取れる。まだまだ彼らの歩みは止まらない。(後藤寛子)