koboreに初インタビュー! 1stフルアルバムに滲み出る決意、バンドの結成から現在まで、全員で語る!


俺がこうやって!って言ったらそのまま弾いてくれそうな人を誘いました(笑)


――まず、バンド結成の経緯を教えて下さい。

佐藤赳(Vo・G) 俺と安藤と田中は同じ高校の軽音部だったんです。3人とも歳が1個ずつ違うんですけど。やっていたのはコピバンなんですけど、3人とも別々のバンドを組んでいて、俺はKANA-BOONをコピーしてました。

田中そら(B) 俺はDOESとかチャットモンチーとかやってましたね。

安藤太一(G・Cho) 僕はONE OK ROCKをやってました。

佐藤 府中東高校っていう、軽音部のレベルが高い高校だったんです。でも大抵同年代でバンドを組んでたんで、お互いほとんど喋ったことはなかったんですよね。それで、俺がもともと弾き語りをやってたんですけど、「これをバンドサウンドでやったらどうなるんだろう?」って思い立った時に、暇そうにしていたふたりを誘ったっていう……。

田中 暇じゃなかったわ(笑)。

佐藤 こいつは当時高3で受験期だったんです(笑)。でも、田中は後輩で唯一絡んでた奴で。ベース上手くて、でも目も合わせられないような面白い奴だったんで誘いました。安藤はTwitterで「サポート募集してます」って呟いてたのを見掛けて、あぁこいつでいいやって誘いました(笑)。フォローもしてなかったんですけど。

――誘うほうも誘うほうですけど、誘われたほうもよく乗っかりましたね(笑)。プレイスタイルや音楽に対する姿勢に惹かれたわけではなかったんですか?

佐藤 いや、まったく! お互いコピバンしかやってなかったんで、プレイとかそういう次元じゃなかったです。単純に暇そうだったんで誘いました。どれだけ上手いとか関係なくて、マジでやらなさそうな、言う事聞いてくれそうな人。俺がこうやって!って言ったらそのまま弾いてくれそうな人を誘いました(笑)。

田中 実際そんな風に誘われてないですけどね(笑)。LINEで結構熱い文章が送られてきましたし。遊び感覚でバンドをやろうと思ったっていうのは後日知りましたね。もう、最低な男ですよ……(笑)。

安藤 僕は誘われたタイミングでギターを弾きたかったので入りました。他のバンドでボーカルもやってたんですけど、ボーカルをやりたくて歌ってたわけではなくて。その時はとりあえず経験だ!と思ってやってましたけど、やっぱりギターを弾きたいなと思って誘いに乗りました。でも赳が最初からいい曲を書いてきてたので、遊びで、という感じではなかったです。

佐藤 僕は完全に遊びでしたね(笑)。

――伊藤さんはサポートドラマーを経て、2017年に正式加入されたんですよね? どういった流れで加入に至ったんですか?

伊藤克起(Dr) 出会いとしては、前のバンドに居た時にイベントで彼らと対バンしたことがあったんです。

佐藤 その時は「ワンオケロック」っていう名前で出てたんですよ、ONE OK ROCKの曲全然やんないのに(笑)。今のkoboreの曲もめっちゃやってたし。で、その時にめちゃくちゃドラムが上手いヤベぇ高校生がいる!って気づいて。その時には、入ってもらうってことは頭になかったんですけど。そしたら当時のドラムが「バラードじゃなくてデスコアやりたい」って言い出して、結局抜けることになって。そのタイミングで、彼をサポートとして誘いました。

伊藤 もともとのバンドが結構なぁなぁになってたし、自分自身将来的にドラムをやってくか悩んでた時期だったんです。その時に「とりあえず年内までサポートでやらない?」って連絡が来たんですよ。koboreのライブには行ってたし、音源も買ってて、実は僕の両親もkoboreが好きなんですよ(笑)。なんなら、両親のほうが俺よりも早くサポート加入の決断してましたね。「声かけてくれてるんだからいけるよ!」って(笑)。

佐藤 俺は伊藤の両親が俺達のライブに来てくれてることも、伊藤が前バンドで上手くいってないことも全部知ったうえで、計画的に誘いました。それで伊藤が高校を卒業するタイミングで前バンドを解散させることになって、そこから正規加入してもらいました。伊藤が入ってから1発目のライブが「ビクターロック祭り」の幕張メッセで、加入が決まった直後にTHE NINTH APOLLOのTSUTAYA O-EASTでのイベントに呼んでもらったりして、もうビビったっすね(笑)。でもそのあたりから、やっと今のkoboreが始まったという感覚です。


1stフルアルバムにして、最大の苦しみの1枚。絞り出した作品です


――現在の4人になってから最初の作品が1stミニアルバム『アケユク ヨル ニ』ということですが、それまでの楽曲との変化はありました?

佐藤 単純に、明るくなりましたね。最初は《もし俺が死んだら》なんて歌ってたので、その頃に比べたら今はイキイキしてますね。当時の曲は今じゃ聴けないです。変化のきっかけとしては、完全にライブをしすぎましたね。その環境の中で《死ぬ》なんて歌ってる場合じゃないというか。当時はライブを月に20本くらいやってたし、その半分は地元のライブハウス(=府中Flight)でやってて。チケットも自転車で配りに行ったりして、本当にローカルでやってましたね」

――作詞は佐藤さんが担当していますが、曲作りに関してはどういった工程で作られるんですか?

佐藤 土台を僕が作っていって、スタジオに入って皆で話し合って作っていく感じです。

田中 作品によっては結構意見がぶつかったりしますね。

――今作『零になって』ではどうでした?

佐藤 『零になって』はツアー中に全部作ったんで、もう2日酔いすぎて(笑)。各自アレンジを作ってきて、スタジオでボン!と合わせるっていう作り方でした。もう時間がなさすぎて、スタジオで皆で詰めていく暇もなくて。僕がドラムまで音を付けてきて、あとはもうそれぞれがオリジナリティを入れてくれ!っていう無理なお願いをしました。だから今回はめちゃくちゃ特殊ですね。ヤバいくらいエグかった。

伊藤 俺は結構楽しかったけどね。

佐藤 ほんとに? 2日酔いじゃなかったからじゃない?(笑)。

田中 俺は辛かったっすね。

安藤 そうっすね……今回メインリフを赳ががっつり作ってきたので、そこに寄り添うように展開していきました。

佐藤 僕はツアー中に各地でオフを楽しめないのが一番嫌で。だから現地で遊びたい気持ちと曲を作らなきゃっていう気持ちとの闘いでしたね

――じゃあ今作は結構キツいなかで仕上がったんですね。

佐藤 いやもう、苦し紛れの1枚ですね(笑)。1stフルアルバムにして、最大の苦しみの1枚。絞り出した作品です。

――難産だからこそ愛せるという面もありますからね!(笑)。でも今作は全10曲中7曲が新曲ということで、かなり攻めていますよね。アルバムのコンセプトや構想はあったんですか?

佐藤 もともと楽曲の骨組みやストック的なものはまったくなくて。で、ツアー前にフルアルバムを作りましょうってなった時も、「まぁなんとかなるでしょ」って思ってました。

田中 「大丈夫なの?」ってずっと思ってました(笑)。

佐藤 『零になって』というタイトルも、ツアーが終わっていったんゼロにしてみようかなと思って付けました。


photo by ハラタイチ

“ナイトワンダー”や“スーパーソニック”は、「キャッチー」をメインにしていきたいと思って作りました


――ショートチューン“ティーンエイジグラフィティー”を幕開けに、スピード感を感じられる始まりになっている印象を受けましたが、これまでのツアーやライブで培った経験を表現しようと思ったんですか?

佐藤 そんなに意識はしていなくて、ナチュラルにその流れになった感じはありますね。その日その日に思ったことを曲にするタイプなので、背伸びしてゆったりとした大人っぽい曲を作ろうとか、「あの人の目線で曲を書いてみよう」とかはあんまり思ったことがなくて。全部自分の思ったことなんですよね。だから意図的にテンションを決めたわけではなかったです。自分的にはちょうどいい湯加減の曲順になったなと思います。

――でもその勢いが、押しつけがましくないですよね。無駄な圧がないというか。たとえば歌詞に出てくる《君》という言葉が、がっちり特定されていないように聞こえて、そこに聴き手がつけ入る余白があるように感じます。

佐藤 あー、たしかに。《君》っていう言葉は、おっしゃるとおり照準が全然定まってないですね。それが人でも音楽でも物でもいいし、そこにそれぞれが思う何かを当てはめてもらって、聴いた人の曲になっていけばいいなと思ってます。だから押しつけがましいと思われないのかもしれないです。

――収録曲で言えば、これまで発表した“幸せ”や“君にとって”が入ってなかったことも個人的には意外でした。1stフルアルバムには「これまでのバンドの総括をする」という意味合いも含まれることがあるなかで、MV化されて認知されている楽曲を外した理由はありますか?

田中 曲決めの時に“幸せ”って出てこなかったよね?

佐藤 出てこなかったね。そういう話にすらならなかったですね。でも逆に、僕自身カップリングが好きだったっていうのはあるかもしれないですね。シングルのメイン曲よりもカップリングのほうがいいパターンってあるじゃないですか? だからメディアでも聴ける曲は置いておいて、「メインよりももっといい曲があるんだよ! もっと推したい曲があるんだよ!」っていう意味で、“テレキャスター”だったり、廃盤になった“おやすみ”を再録してみたりしたという経緯はありました。

田中 “テレキャスター”はライブでも人気だしね。

――なるほど。そしてリード曲“ナイトワンダー”や“スーパーソニック”は、これまでのkoboreにはなかった新機軸を構築した楽曲だと思うのですが、実感としてはどうですか?

佐藤 この2曲は「キャッチー」をメインにしていきたいと思って作りました。繰り返し聴いてないのに、ずっと耳に残る曲ってなんなんだろう?って考えた時に、たとえばKANA-BOONだったらどう足掻いても耳に残るあのギターリフや、ボーカルの擬音がヤバいくらい耳に付着するあの感じを思い出したんです。そこからインスピレーションを受けて、ギターリフとメロディに対して、余りなくピタっとはまった言葉や韻踏みを“ナイトワンダー”に入れてみました。“スーパーソニック”は単語的にも覚えやすいし、シンプルにワードを押し出していくように作りました。これまで「キャッチー」を意識して作ったことがなかったので、逆に意識したらどうなるんだろう?と思いながら作っていきましたね。

――実験的な試みだったんですね。作ってみてどうでした?

佐藤 いやぁ、一歩間違えればダサくなるし、きわっきわのラインだなと思いましたね。それこそ歌謡曲を作るのか、ロックチューンを作るのかというところを天秤にかけて作ったというか。本当に難しかったですね。

田中 アレンジはかなり迷いましたね。でも最初に“スーパーソニック”をもらった時からあのアホっぽい感じがすごい好きで、あえてダサくしました。でもメロがいいからこそ、甘辛的に仕上がったように思います。

伊藤 最初に提示されたパターンを聴いて、歌が良かったので、ドラムが変に目立たないように大人しくしてました。それよりもどうやってノリを出していくか?に重点を置きましたね。

安藤 “ナイトワンダー”は、赳が持ってきたメインリフがすごい良かったので、逆に詰め込みすぎると浮遊感のある雰囲気を崩してしまいそうだなと思って、あえて詰めずにアルペジオで変なコードを使ってみたり、音を入れすぎないようにしました。サビでドラムもめちゃくちゃいいフレーズを叩いてたりするので、できるだけ「何もしない」に徹しました。

――聴き手を踊らせるには、バンドは緻密に計算して音の引き算をして、一歩引いた目で見なきゃいけないこともあるんですね。

佐藤 いやぁ、それが超むずかったですね。こういう曲を連投できるバンドってすごいんだなって思いました。匙加減を考えるのが面倒で、もう無理ですね!(笑)。でも「ダサくしないように」というよりは、「ダサくならないようにどれだけダサさを詰め込めるか?」みたいなところはありましたね。ジェンガみたいな(笑)。

――経験も詰めたということですね(笑)。


幅広い視野で、ジャンルにとらわれないバンドになりたいと思ってます


――今作では、既存曲の“おやすみ”“夜を抜け出して”が続けて収録されていることによって、歌詞の繋がりも単曲で聴く以上にドラマチックに感じられますね。

佐藤 そうなんですよね。このアルバムのこの並びになることによって、その曲の違った一面が聴けるというか、そういったところも含めて楽しんでほしいなと思ってこうしました。

この2曲もそうですけど、koboreの曲には「夜」をテーマにした曲がとても多いですよね?

佐藤 kobore=夜、というイメージがお客さんの中でも結構あって。でも「夜」と一言で言っても、単純にひとつのシチュエーションを歌うようにはしたくなかったんです。たとえば“夜を抜け出して”は明るい夜だし、“ナイトワンダー”はずっと何かを求めて彷徨っている歌詞で、その詞に対してのメロウなメロディで、“おやすみ”は悲しいんだけど、暗くないメロディだし。そういうふうに、「夜」に対しての当たり方がまったく違うように見せたいなと思いますし、koboreの幅広さに気づいてもらえたら嬉しいなと思いながら作ってます。

――“東京タワー”も、それまでの流れとは変わった雰囲気を醸した、哀愁深い曲ですよね。

佐藤 ツアーで1ヶ月くらい東京を離れていると、やっぱり東京に帰りたいなと思うんです。前回のツアーから帰ってきたあとに東京タワーを見て、いつもならただの赤い鉄塔だと思って見てたんですけど、その時は「あ、やっぱり東京タワーっていいな」と思ったのがきっかけですね。「東京」ではなく「東京タワー」にしたのはちょっと捻くれた感じですけど、これもさっきの《君》と同じように、その人にとっての「何か」に変えて聴いてもらえたらいいですね。

――今「捻くれた」という自己評価もありましたが、ラストの“さよならは言わずに”では、《「また会いに行くよ」なんてさ/言ってはみたけど約束は出来ないしな》と提示しつつも、最後には《ここで待ってる》と帰結しているという、本当に言いたいことをラストに持ってくるという作風は、そういった性格から滲むものなんですか?

佐藤 単純な曲にしたくないというか、歌詞をドラマチックにしたいという想いがあるんですよね。一定の流れだと感情も入れ込むことができないと思うので、山を作ることによってグッとくるポイントを生み出していくというのは意識してます。特にこの曲はラストに入ってるので、フィナーレ的に持っていくことを意識して作りましたね。僕、作文が好きなんです。起承転結の付け方とか、そういうところも含めて歌詞はドラマッチックに仕上げています。

田中 彼の歌詞を読んでも、今作なら“東京タワー”は、最初はネガティブな感じがしたんですけど、僕的には応援歌として受け取りました。僕はメンバーですけど、koboreのいちファンとしての立場で聴くこともあるので。

安藤 僕は“ワンルームメモリー”がすごい好きですね。口に出して言いたくなるテンポ感とか、昔の悲しい想い出だけど元気に聞こえるところがいいなと思います。

――歌詞が表現するドラマに、サウンドでより深みを出しているというバンドのスタンスが総じて発揮されている作品ですね。3月からは今作を引っ提げたツアーも始まりますし、これからのkoboreはどうなっていきたいですか?

佐藤 幅広い視野で、ジャンルにとらわれないバンドになりたいと思ってます。どのイベントに行ってもkoboreがいるやん!みたいな状態にしたいです。それ込みで、もっと高い位置にどんどん登り詰めていきたいですね。


“ナイトワンダー”(Music Video)


“東京タワー”(Music Video)



リリース情報

1st full album『零になって』1月23日発売
PADF-005 ¥2,484(税込)
《収録曲》
 <DISC 1>
 01. ティーンエイジグラフィティー
 02. どうしようもないな
 03. テレキャスター
 04. ワンルームメモリー
 05. ナイトワンダー
 06. おやすみ
 07. 夜を抜け出して
 08. スーパーソニック
 09. 東京タワー
 10. さよならを言わずに


ライブ情報

kobore 「スーパーソニックTOUR 2019」

2019年3月8日(月) 東京・府中Flight
2019年3月9日(土) 神奈川・横浜F.A.D
2019年3月20日(水) 石川・金沢vanvanV4
2019年3月21日(木・祝) 兵庫・神戸 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
2019年3月26日(火) 岡山・岡山CRAZYMAMA 2ndRoom
2019年3月30日(土) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
2019年3月31日(日) 千葉・千葉LOOK
2019年4月2日(火) 静岡・静岡UMBER
2019年4月4日(木) 愛媛・松山Double-u Studio
2019年4月6日(土) 福岡・福岡Queblick
2019年4月7日(日) 鹿児島・鹿児島SRホール
2019年4月9日(火) 香川・高松DIME
2019年4月10日(水) 広島・広島CAVE-BE
2019年4月13日(土) 長野・松本ALECX
2019年4月14日(日) 福島・郡山#9
2019年4月16日(火) 新潟・新潟RIVERST
2019年5月3日(金・祝) 北海道・札幌COLONY
2019年5月5日(日) 青森・八戸FOR-ME
2019年5月6日(月・祝) 宮城・仙台enn2nd
2019年5月8日(水) 愛知・名古屋APOLLO BASE
2019年5月9日(木) 大阪・大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
2019年5月11日(土) 東京・渋谷CLUB QUATTRO



提供:Paddy field
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部