会場に着いたのは、19:00より少し前だったがやや受付が混雑していて、受付待ちの間にライブはスタートしてしまった。ニコ生公式での生中継もあったからか19:00きっかり。フロアに入っていないのに耳をつんざくような野太い大歓声が聴こえてくる。手早く受付を済ませ、ダッシュで2階へ駆け上がり、重たいドアを開くとそこには楽園が…なんてことはなく、ファンタジックとカオティックが入り乱れる凄まじい光景だった。何だこれは!30秒に一回くらいの割合で、詰め掛けたももクロ男児たちからのシンガロングやコールが巻き起こっている。このペースでもつのかよ!とツッコミを入れたくなるほどの狂乱の宴である。それはステージ上の6人も同じ。ダンスをするにはあまりにも速いBPMのトラックに合わせて高速で体を動かしている。曲間のMCはなく、1曲終わるとステージ上の照明が落ち、暗闇の中で6人は次の曲のポーズをとって静止する。と、ここでフロアから大歓声、どうやらこのポーズだけで、ももクロ男児たちは次に披露される楽曲がわかっている様子。
という具合にライブは進んでいくのだけど、とにかくダンスがすごい。トラックは、ジャングルやドラムンベース、ガバっぽい高速ビートで、その上でチープなシンセがヒステリックに鳴りまくる。7曲やってメンバーそれぞれの自己紹介的なMCがあり、続けて5曲。セットリストによると3月9日にリリースされる“ミライボウル”も披露されている。10曲目の“行くぜ!怪盗少女”でフロアは絶頂に達する。アイドルのライブを観たのは生涯でこれが初めてだったから終始そのフロアのテンションに圧倒されてしまったけど、すごいものを観た!という感覚はしっかりと残った。これで平均年齢15.3歳である。アイドルって凄まじい…。フロアは2階席から見ると、ちょうどももクロファン半分、かまってちゃんファン半分、といったところ。統率のとれたパフォーマンス、完成されたエンターテイメント空間。次のかまっちゃんはだいじょうぶだろうか…。
この日もいつもと同じ。2曲続けて演奏されることはなく、1曲終わってはしゃべり1曲終わってはしゃべり……次に演奏する楽曲をの子かmonoが宣言→もう一方が茶々を入れる→観客から「みぃさぁこおおおぁぁ」とか「アゴー」とか「早くやれー」、などのレスポンス→「はい、がんばります!」or「うるせー!」と煽り→見かねた誰かが無視して演奏開始、という三段オチどころか四段、五段オチのような展開でライブは進行。の子のピンクのストラトがソリッドにドライブし、oiコールに沸いた2曲目“肉魔法”の後では、みさこが25年間の人生で初めてラブレターをもらったという話を披露。が、「いってもおれはよぉー、別によぉー映画とか関係ねぇーんだよ!おれ自身が映画だからだ!」(このフレーズ、気に入ったのかな)とそれをの子が踏み潰す。そして“レッツゴー武道館”のサビでは「走れ!」→「やーねー!」のコール&レスポンスを巻き起こしていく。“夜空の虫とどこまでも”の序盤は、ちばぎんの重たいベースラインに導かれたの子のフリー・スタイルなラップから。そしてオリエンタルで、それとも対旋律的にアニソンさながらの鍵盤を執拗に鳴らし続けるmonoが壮大なサウンドスケープを描いてゆく。ギターを排したこの曲での子は、ヴォーコーダーを使用して特定のジェンダーを感じさせない、性別不明な声の揺らぎを見せるのだった。こうした様々なの子の声色を聴くとなんとも言えない気持ちになる。の子が歌うのは世界のためでも社会のためでもない。世界や社会に混在する様々な感情や人格ではなく、その前に、ひとりの人間の中にこれだけ複雑な感情が渦巻いているということ生々しく叩きつけるのだ。
「そんなもんどうでもいいんだよ。ポップとかロックとか!そんなもん!もうぶっ壊れることがすべていい!そして真実はひとつ!そう、おまえらのそういったことを、意見をだますことが一番快感であるってことだけ。そう、それが夕方のピアノ!今のおれがやるからこそ!おまえらもいろいろあるだろ、死にたい、死にたい気持ちを死ねと、死ねと歓迎して生きることができれば!」おお、これは名言かもしれないぞの子!そんなの子の演説が叫ばれる中、monoの美しいピアノのリフレインでイントロがスタートする。そう、の子が「死にたい気持ちを死ねと歓迎して生きることができれば」と言ったように「死ね」という言葉が連呼される“夕方のピアノ”は、それとは逆説的に救済を、「生きる」ということを求めているようにも聴こえるのだ。
神聖かまってちゃんは次のステップは4月の両国国技館と「劇場版 神聖かまってちゃん」である。そして今日のライブ。異色の2マンだけに、かまっちゃんだけに、何らかの「事件」を期待した人も少なくなかったと思うけれど、意外なほどにあっさりとライブは終わった。(かまってちゃんのセットリストはレアな楽曲がいくつかあったが)でも、このライブを観た平均年齢15.3歳というあまりにも若いももクロの6人はどう思ったのだろう。まさかのロック注入、起爆剤か。はたまた夢にまで出てきそうな一生のトラウマか。もし観ていたとしたら、ぜひ彼女たちに聞いてみたいところ。(古川純基)
<セットリスト>
ももいろクローバー
オープニング overture →ももいろクローバー参上!!
1.Chai Maxx
2.ココ☆ナツ
3.キミとセカイ
4.Believe
5.ピンキージョーンズ
6.最強パレパレード
7.全力少女
8.ミライボウル
9.words of the mind
10.行くぜっ!怪盗少女
11.ツヨク ツヨク
12.走れ!
神聖かまってちゃん
1.あるてぃめっとレイザー!
2.肉魔法
3.レッツゴー武道館
4.さわやかな朝
5.夜空の虫とどこまでも
6.ぺんてる
7.制服b少年
8.バグったのーみそ
<アンコール>
9.ベイビーレイニーデイリー
10.夕方のピアノ