お正月特別企画! ロッキング・オンが選ぶ2019年間ベスト・アルバムTOP10を発表!(第6位)

あけましておめでとうございます!

2020年を迎えたこのタイミングで、ロッキング・オンが選んだ2019年の「年間ベスト・アルバム」上位10枚を、10位〜1位まで、毎日2作品ずつ順に発表していきます。

年間6位の作品はこちら!

【No.6】
『ポニー』
レックス・オレンジ・カウンティ



「見えざる未来」を紡ぐメロディ

英ハンプシャーのベッドルーム・ポッパーだったレックス・オレンジ・カウンティことアレックス・オコナーは、2017年の前作『アプリコット・プリンセス』をリリース、タイラー・ザ・クリエイターの『フラワー・ボーイ』にシンガー兼ソングライターとしてフィーチャーされたことでも一躍脚光を浴びた。オールディーズからAOR、ドリーム・ポップにクラブ・ジャズ、ヒップホップまでを広く見渡すYouTube世代ならではの情報処理能力と、高度なポップ・センスを併せ持つアレックスの資質が同業者やリスナーの間で噂されるまでに時間はかからず、ランディ・ニューマンやベニー・シングスといった新旧ポップ・マエストロたちとの共演も話題に。そんなタイミングで2018年のサマーソニック時に来日したレックス・オレンジ・カウンティのステージは、フレッシュで開放的な現代ポップ・ミュージックの息吹を感じ取る絶好の機会となった。言わば、「時代に渇望されていたSSW」として、彼は20代のキャリアに踏み出していたのである。

2019年、レックス・オレンジ・カウンティはグラストンベリーやロラパルーザ・ベルリン(本国USでは前年に出演)など世界各地の大型フェスで引っ張りだこのアーティストとなり、すでに新曲群も盛大なシンガロングを生み出す状況となっていた。10月に届けられた待望のニュー・アルバム『ポニー』はメジャーからのリリースで、各地チャートでトップ5に食い込んだ。マルチインストゥルメンタリストであるアレックスのハンドメイド感を残しながらも、一流の演奏陣とプロダクションによるリッチな音像が印象的な作品だ。そこで紡がれた楽曲たちの中では、そんなプロダクションから想像がつかないが、激変した環境への戸惑いや新しい生活に踏み込んでゆく勇気が、アッケラカンと、しかし饒舌に歌われていたのである。リード曲“10/10”でアレックスは幼少期に抱いた情熱を回想し、彼自身のプライベートな物語のまま多くの人々にその情熱を共有させた。混乱を解きほぐし、宥め、そしてポジティブな思考を促す音楽と言葉に寄せる丸裸の信頼が、『ポニー』には鳴っている。「個」と「現在進行形の世界」を淀みなく接続させ、希望を抱き続けるためにアレックスが必要としたものは、徹底して個人的な音楽への信頼だったのだろう。(小池宏和)

『ポニー』ジャケット





「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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『rockin'on』2020年1月号