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彼らの出演は今回、カウントダウン・ジャパンを開催するに当たって、とても重要なトピックだった。そして彼ら自身も、間違いなく大きな挑戦の意気込みを持ってこのステージに上ってくれたと思う。FIRE BALLは、ダンス・ホールレゲエという、ダンス・カルチャーの中でも独自のルールを持つ世界の中で発展してきたグループだ。彼らは、この音楽とこのシーンにとても大きな愛と情熱を持っている。しかし彼らは、時にこのシーンの暗黙の了解の範疇を飛び出えたこともしてきた。彼らは今、オリジナルのバンドを引き連れて、通常のコンサートの時間帯で全国ツアーを回っている。これはダンス・ホールレゲエの世界では異例のことである。さらに夏のフジ・ロック出演に続いての、このカウントダウン・ジャパンへの出演だ。彼らはこれらを、レゲエのシーンを飛び出す為ではなくて、レゲエが好きな人も、今までレゲエを知らなかった人も、そして自分達も、全部引っくるめてもっとレゲエという音楽を楽しめるような世界を作る為に実行している。その為に、自分達の愛するレゲエの本質は失うことなく、楽曲もラジカルになっていく彼らならば、きっとこのフェスティバルのオーディエンスと繋がり合えるはずだという確信が我々にもあった。
そして、その確信をFIRE BALLは全身全霊で実現してくれた。インスト・チューン“JUNGLE ROOTS”に続いて、大きな旗を振って登場したCHOSEN LEEが次々とメンバーを呼び込む“到来”――その煽りに、反射的にテンションを上げた敏感なオーディエンスもたくさんいたが、当然ながら彼らの巨大なエネルギーを感じながらもどのように盛り上がればいいのかわからずにいた人もいた。しかし、彼らは1曲ごとにオーディエンスにレゲエの楽しみ方をプリミティブに実感させていき、ラストの“LIGHT UP THE FIRE”“BRIGHT IT ON”では会場全体が波を打ち、ほとんどの人がタオルを回して楽しむ所まで幕張をヒート・アップさせてしまった。これは、まずダンスホール・レゲエのタフさと豊かさとエンターテインメント性の勝利であり、それをこれだけのスピード感とスケールで人々に伝えることができてしまうところに、僕はFIRE BALLというグループの才能の巨大さと貴重さ、そしてまっすぐな意志を感じた。本当、素晴らしくダイナミックな40分劇だった。  (古河晋)

「すでに筋肉痛」