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「本日のスポンサーは、ハイネケン・ビールでございます」。一杯に集まったお客さんの大歓声を前に、いつものように酒を片手にふらっと現れた向井の第一声が、これ。マイペースな登場が、いかにも彼らしい。30日に出演するバンド・スタイルのZAZEN BOYSと違い、テレキャスターを抱えた無戒が広いステージに一人で立つ今回。しかし、最初の一音が鳴り響くと同時に、あっという間にギャラクシー全体が「無戒ワールド」としか言いようのない独特の空気に包まれた。何しろ、普通の弾き語りじゃない。情感たっぷりの歌と鋭いヒップホップのライミングと妖しげな念仏踊りとが一緒くたになったような、変幻自在の弾き語りなのだ。「イェ、イェ、イェ、イェ、ノってきたぜ、幕張! 時には女とまぐわり!」とMCでも即席の韻を踏みつつ、次々と時空の軸がずれた言語感覚のライムを繰り広げる。そして、「新宿三丁目の裏路地あたりに片目がつぶれた野良猫を見ました」という語りから始まる“NEKO ODORI”は、一転してフォーキーなテイスト。ステージ上の佇まいはどことなくユーモラスなんだけど、その言葉とメロディのセンスには思わずはっとさせられた。そして、意外と言ったらすごく失礼だけど、ナンバーガールでの絶叫ヴォーカルと違って、向井の声がすごくいい歌声なのだ。聴こえてくるのは声とギターの音だけなのに、頭の中には鮮やかに歌の情景が映し出される。「無い戒めと書いて、無戒秀徳と申しました。乾杯!」と、あくまで飄々とステージを去った無戒秀徳。一人丸腰でステージに立つからこそ露になる彼の才能を見せつけた30分だった。(柴那典)

右側の少年はナンバガTシャツ着てました。
「向井さんに乾杯ッス」