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 斉藤和義のライヴは代表曲“幸福な朝食、退屈な夕食”から幕を開けた。なんとドラムに元くるりのもっくん、ベースにスミクラ氏を配した3人編成で、切れ味の鋭い演奏を聞かせた。マーク・リヴォットやロバート・クワインといった精鋭とセッションした斉藤らしい、実に堂々としたステージングだ。朴訥としたイメージと共に語られやすい人だが、乱暴な歌いまわし、退屈でいらだった歌詞の世界観は、いつキレるかわからない暴力の予感をはらんでいる。特に後半の“劇的な瞬間”“僕の踵はなかなか減らない”の流れは最高にスリリングだった。ギターの弦がナイフに匹敵する金属の凶器だということを証明する、すさまじいカッティングを叩きつけた。

 ラストは、それまでの「動」のモードとは一転して、“歌うたいのバラッド”。交響楽団との共演を経た斉藤らしい、壮大なセンチメンタリズムが会場を包みこんだ。

 気の抜けた声でMCを放つ以外は、正体不明のテンションを撒き散らした斉藤和義。フェス特有の祝祭空間に、最初に緊迫感を持ち込んだのは彼だった。    (其田尚也)

「歌うたいのバラッド、泣けた!!」 「近かったから気軽に来れました!」「モッくんじゃないかなあって途中から思ってたら……やっぱり!!」