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静まり返ったステージに、ギターのストロークが一閃、続いてエモーショナルな歌声が響き渡る。今年鮮烈なデビューを果たしたシンガー、榎本くるみである。 1曲目からいきなり新曲“螺旋の記憶”。場の空気はピンと張り詰めていく。Tシャツにジーンズというラフな衣装に包まれた小柄な身体からは想像もつかないほど力強い歌声に、観客からはどよめきにも似た歓声が上がる。続いてパワフルなロック・ナンバー“素晴らしい世界”へ突入。ドラマティックな曲展開、大文字の肯定に貫かれた歌詞。どくとくと脈打つような生命力をそのまま音楽にしたような美しさである。圧巻はラスト2曲。それまでにも増してほとばしる感情をさらけ出した“RAINBOW DUST”から、ピアノの調べに乗せて静かに歌われるファースト・シングル“心のカタチ”へ。嘘のない言葉が、万感の思いを込めて放たれる。それだけで、ただただ感動的なのだ。「歌うことで生きている」、正真正銘の歌い手。そういう存在に、久しぶりに出会った気がする。(小川智宏)