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この人の偉大さについては、こんなところで書ききれるものではない。岡林信康。フォークの神様と呼ばれ、こうしたロック・フェスの場で演奏することは非常にまれな人だ。三人の打楽器奏者を従えてステージに現れて、1曲目として歌いだしたのは“虹の舟歌”。まず、その声がまったく違う。ずっしりとした大きな密度を持っていて、それでいてどこか麗しい輪郭がある。「僕らがやっているのは、周りでやっている雑音とはリズムが違う」と本人もMCで言っていたが、現在、岡林信康は土着の民謡のリズムにロックを乗せる「エンヤトット」という音楽をやっている。途中からは笛・尺八と、津軽三味線を加えた総勢6人編成で、様々な民族に端を発するリズムにロックとしての声を乗せていく。そのリズムは大きく、歌は普遍的な真実へとまっすぐ向かおうとする。もちろん、岡林信康ならではのトークも健在である。「なにを言ってもウケる客だ。あんまりなんでも歓声をウケると、不愉快になる」。リズムも含めて、今のロック・シーンにはない「言葉」を岡林信康は語りかける。けれど、それは強くこの場所でも響いていた。(古川琢也)