メニュー


薄暗いステージにSEが鳴り響く中、登場した真空ホロウ。演奏の先陣を切ったのは大貫朋也(Dr)であった。彼のドラムがフロアを揺るがし、松本明人(G・Vo)と村田智史(B)がすぐに合流して、一気に構築されていくアンサンブルが美しい。1曲目は“No.2”。ライトで真っ赤に染め上げられたステージで奏でられた轟音、重いビート、不敵な殺気を帯びた歌声を目の当たりにして、お客さんは一気に釘付けとなっていく。
続いて“被害妄想と自己暗示による不快感”。残響感を利かせて渦巻く独特なギター・フレーズを時折繰り出しながら、爆音が高鳴っていく。まだ夕方であるはずだが、真夜中のパーティーに漂っているような妖艶な興奮が、MOON STAGEを支配していった。透明感のあるギターのアルペジオがリードする哀愁/バンド一丸の爆音による刺激のコントラストがドラマチックに花開いた“グライダー”。狂おしいメロディが、豊かな起伏を描きながら展開した“蘇生のガーデン”。ほとんど間を置かずに演奏を続けてきた3人であったが、ここで小休止。「こんばんは。今年もみなさんのおかげで、このフェスのステージに立てます。しかもこんなにたくさんの人に観てもらえてハッピーです。ハッピーニューイヤーの手前です! 来年から毎月24日に下北沢シェルターで企画ライヴをやりますので、よろしく。みんなやり残したことない? 告白とか。じゃあ僕が代わりに……みんな大好きです! 行くぜ幕張!」。ちょっととぼけたトーンの村田のMCが飛び出したが、和んでいる暇はなかった。一気に終盤の2曲へと雪崩れ込んだ。凄まじいスピード感を炸裂させた“ナサム・コニロム”。そして、ラストを飾ったのは“サイレン”。噛み付くような攻撃性と憂いをスリリングに行き来する松本の歌声が胸に沁みた。今回のステージで披露されたのは全6曲だが、高密度で真空ホロウの凄味を体感したひと時となった。(田中大)