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鋼のようなサウンドを叩きつけたP.T.Pから一転、透明感ある繊細なサウンドでCOSMO STAGEを白昼夢の世界へと誘い込んだのはTHE NOVEMBERS。いつものように漆黒の衣装に身を包んだメンバー、SEに乗って淡々と位置につくと"dysphoria"をプレイ。時に絹糸のように絡み合い、時にカオティックにぶつかり合う小林祐介(Vo/G)&ケンゴマツモト(G)のギターと、それらを力強く支える高松浩史(B)と吉木諒祐(Dr)のビートが、COSMO STAGEをカオティックな色に染め上げていく。続く"she lab luck"では、イントロのアルペジオ、そして鋭利なカッティング・ギターなど、ケンゴマツモトの妖艶なサウンドがフロアを魅了する。「次は新しい曲。COSMO STAGEに捧げます」として披露された新曲では、海の底に誘い込むようなサウンドから凄まじい轟音へと突入するダイナミックな世界が描かれた。まばゆい光が降り注いでくるような多幸感あるサウンドが炸裂する"Misstopia"のあと、小林がおもむろに口を開く。「なんか……皆が生きてるんだなと思ったら歌いながら感動してしまいました」。そう、闇の底を覗くような不穏で切迫したサウンドを奏でながら、THE NOVEMBERSの音楽は常にまばゆい光の世界へと直結している。轟音と静寂を行き来しながら桃源郷のようなロックを紡ぎだす彼らの真髄が透けて見えるような言葉だった。

「皆さんも生きていることを祝福しながら今日一日を楽しんでください」という言葉に続いて鳴らされたのは、"こわれる""白痴"。より一層激しさを増したサウンドに、それまで雷に打たれたように呆然と立ち尽くしていたフロアからちらほらと拳が上がる。大きな歓声やシンガロングが起こることはないけれど、確かな熱狂がフロアを包み込んだ瞬間だった。轟音と静寂のコントラストが美しい、ピュアで高潔なロックに酔わされた30分。すべての瞬間がフラッシュバックのように脳を刺激する圧巻のアクトだった。(齋藤美穂)