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今年も残すところあと僅かという所でMOON STAGEに現れたのは、一昨年の「COUNTDOWN JACK」優勝アーティストとしての出演から、今年で3年連続となるplenty。オープニング・ナンバーは"理由"。繊細なアンサンブルにのって、江沼(Vo/G)の透明感溢れる、独特のなめらかな美声が高らかに響き渡り、オーディエンスは完全にステージに釘付け状態に。そして来年1月発売のシングルからの"最近どうなの?"から、「いやー、人多いっすね。年末ということで、どうですか? 何かやり残したことは? (フロアから年賀状!という声) 年賀状はもうアウトでしょ(笑)。今年で3年目なんですよ。いつもMOON STAGEで。何か縁があるのかなって。まあ、たぶん無いんだろうな」とフラットなトーンで江沼がMC。続く"人との距離のはかりかた"では、人と人との隔たりを感じながらも、それを乗り越えようと、《信じたいんだよ 寄り添いたいんだよ/僕の声が 届くといいな》と言葉を紡いでいく。そして吉岡(Dr)の力強いキックが焦った心臓の鼓動のように響く"ボクのために歌う吟"を披露。江沼は再び自らの世界への沈降を開始して、そこに浮かび上がってくるちょっと目を背けたくなるような、ドロドロとした人間の本質を掴み取り、我々の前にごろっと提示する。そんな江沼の姿を、会場を埋め尽くしたオーディエンスはみな微動だにせず、固唾をのんで見つめている。「みなさん、来年もよろしくお願いします。あと2曲で帰ります。楽しんでいってください。良いお年を」という江沼の挨拶から"拝啓。皆さま"へ。《病気の人を演じ涙誘う そんなテレビドラマ僕は嫌い》という鮮烈なフレーズが、そして内なる激情を全てさらけ出すかのような激しいアンサンブルのうねりが、会場を包み込む。その熱がだんだんとフロアに伝播し、オーディエンスの体の揺れが大きくなってきたところでラストの"枠"へ。次第に激しさを増していく演奏がオーディエンスの体と心を強く揺さぶり、最後は江沼が言葉にならない声を張り上げて、異様なほど存在感を放つ彼らのステージの幕が下りた。(前島耕)