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封印を解かれたシークレット・アクト、その名は……
15:00  HYDE  グラス・ステージ
8/1 16:50 UP
 ステージ左右に設置されたスクリーンにその名が映し出された瞬間、場内から歓喜と驚愕の声があがった。情報告知が一切なされないままフィールドに集まったオーディエンスの驚き、喜び、戸惑いは過去最高のものだった。そう、シークレット・アクトはHYDE! 主催者であるぼくらも体感したことのない、異様なムードが会場を包んだ。
 こぶしを突き上げながらHYDEがステージに登場、挑発的な視線で会場を見渡しながらコード・カッティング――そこから、HYDEの凍てついた表現世界が外気に触れた。これまで彼の表現から距離をとってきたオーディエンスにこそ見て欲しかった、あらかじめニューウェーヴやグランジの陰影に出会う運命だった表現者・HYDEの実像を。
 1曲目は最新ソロ・シングルから"THE  OTHER  SIDE"。このグランジ・ナンバーには彼の音楽観が如実に表れているとおもう。この世界から突き抜けて向こう側へ、という冒険者としての資質がダイレクトに伝わってくる。危険な音楽を美しく奏でる、その倒錯がHYDEだ。音楽性も、過剰にパンキッシュな佇まいも、すべてが現実の価値観を転覆させるために確信犯的に組織されているようにおもう。
 バンドも3ピースのわりには"塊"として硬度があり、HYDEの唱法も限りなくシャウトに近かった。が、カート・コバーンがそうだったように叫びながら歌っていた。暴力的ではあるが、卵の殻を割るように、メロディを傷つけずに叫び歌っていた。ミラクル・バランスのロックンロール・シンガー、HYDE。そして、そのメロディは聴くものの闇を誘惑する。
 演奏したのは全9曲。半分以上が名前も知られていない新曲である。間奏中はほとんど無言であり、放った言葉は「サンキュー」くらいである。シングル・カットされた至高のドライヴィング・ロックンロール"HELLO"以外は重く、深い海に沈むような楽曲が続いた。そう、黄色い歓声すら深い青に染めるような音楽世界。溺れてしまいそうだった。
 圧巻だったのはビートルズ"ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド"のカヴァー。ワルツのように始まり、ドラッグでラリって宇宙にぶっ飛んだルーシーがオーヴァードーズで死んでしまうような危ういサビへ突入! 原曲の楽観的な世界観は完全に吹き飛び、生命線が浮かんでは消えるようなアレンジが最高だった。
 当日のステージ直前まで名前を告知しない異例のやり方で彼はステージにあがった。シークレット・アクトについて妄想や想像を膨らませていた参加者のみなさんのなかで、賛否両論いろいろあっただろう。フィールドにいると実に様々な声が耳に飛びこんできた。しかし、HYDEというアーティストのディープな内的光景を表現する、そのひとつのメディアとして我々はステージを用意した。フェスという「もうひとつの現実」という舞台装置は、HYDEという「THE  OTHER  SIDE」の住人にはふさわしいと思ったからだ。
 ラスト・ナンバーで異様なテンションでギターを掻き毟る彼の姿に、ぼくは虚飾を一切感じなかった。(其田尚也)
DJブースにはキックのDJ SHUHO登場、
さらにMCUも助太刀で参上してました!

ROCKIN'ONライブラリーも大盛況