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ロック・イン・ジャパン2004最終日、レイク・ステージも残すところあと3アクトとなった。もっともっとロックを貪りたい、もっともっと濃ゆいサウンドスケイプでもって包み込んでほしい――そんな貪欲な感傷を噛み締めるには絶好のアーティストだ。そう、あなたの心にある天国も地獄も自在にロックに昇華してみせる「華麗なる絶望配達人」=syrup16gの登場!!

飛行機の模型をダッチロールさせながら登場した五十嵐。しばしの沈黙の後、がっ、がっ、がっ、とギターのフレーズで唐突にシロップの世界が幕を開ける。“メリモ”だ。「生きるのがつらいとかしんどいとかめんどくさいとか そんなことが言いたくて 偉そうに言いたくて 二酸化炭素吐いてんじゃねえぞ」――およそ「祝祭」というイメージとは真逆の言葉を次々に叩きつけながら、紛れもなくロックンロールとフェスの風景を更新している。

続いてざくざくと青空を切り裂くようなギターのフレーズ!! 1stミニアルバムから“真空”だ。昨年は五十嵐、中畑、レギュラー・サポートBのキタダマキの3人だったが、今回はギターに藤田顕(プレクトラム)を加えての4人編成ということもあって、アンサンブルのダイナミクスと切れ味がハンパない。続いては“クロール”。“真空”と同じく、9月発売の初期楽曲集『delayedead』に収録される超初期のナンバーながら、ミドル・テンポでゆるやかに昇り詰めながら気が付くと崖っぷちに立たされているような、シロップの魔力満載のメロウな曲だ。そして――「遠いよ みんな 遠いよ」と揺れ踊り狂うシロップ史上初の暗黒ダンス・ナンバー(?)、“リアル”へ!! お客さんがゆらゆらステップ踏んでいる。底知れない絶望的なイメージを描きながら、かもしれないし、闇の底から空を見上げるような気持ちで、かもしれないが、それぞれに揺れているのだ。

MCに入ると、なぜかさっきの飛行機の模型越しにデジカメで客席を撮る五十嵐。黒シャツにサングラス。ギターは赤のSG。出で立ちはロック・スター・モードばりばりなのだが、「俺らもう最後かもしんないから、好きにさせろや」と全くもってどうしようもない。「さっきあいつ、デジカメの使い方必死に覚えてたよ」とレポ書いてる僕の横でマネージャーが苦笑している。RIJのパンフでも「イヤイヤだけどがんばります!!!」とコメントしていた五十嵐。どこまで本気かわからないが、紛れもなく本気でロックな男だ。さすが五十嵐。

そしてアルバム『Mouth to Mouse』からさらに“I・N・M”、“変態”。そして“変態”の終わりのキメからキック4つ打ちのリズム、そしてキーの高いベース・フレーズ――ラスト・ナンバー“空をなくす”だ。神経が200%張り詰めるような空気感のアルバム『coup d’Etat』からの曲。今年のシロップは去年にも増してアグレッシヴに、フェス的な共同幻想を壊しにきた。そしてまた新たな「シロップのフェス」を描き出してみせた。さすがシロップ。そしてレイクはあと2組。続いての登場は――グレイプバイン!!(高橋智樹)

1.メリモ
2.真空
3.クロール
4.リアル
5.I・N・M
6.変態
7.空をなくす