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鮮やかな赤のヒールの靴に、銀のドレスという出で立ちで登場した一青窈。冒頭、“ハナミズキ”をアカペラで歌いだした瞬間から、独特の磁場が生まれる。分かりきっていることだが、本当に歌がうまい。そして、声自体が持っている明確なキャラクター。「ここはイケイケではないですけれども、ゆっくり聴いていってください」と彼女は言っていたが、音楽が持つ質量としては、どんなラウド・ナンバーにも負けないものを持っている。来月発売の新曲“つないで手”も含む、ベスト・ヒットと言えるセットリスト。彼女自身は、この日のMCで、「モッシュ・ダイヴ」という概念を今日まで知らず、「(自分のライヴで)モッシュ・ダイヴが起こることはないと思いますが(笑)」と言っていたが、その歌が描く曲線は同じくらい激しく胸のうちを揺り動かす。そして、彼女自身もそのことをよくわかったいたのではないか。最後の“もらい泣き”“さよならありがと”という必殺の2連発まで、ステージ上の彼女は凛とした強さを持っていて、終始笑顔が印象的だった。(古川琢也)