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彼女がステージに現れた瞬間、SOUND OF FORESTの空気が一瞬止まったような気がした。MCを挟まずにいきなりニューアルバム『エメラルド』から、沖縄の方言がふんだんに盛り込まれた挑発的な楽曲“三村エレジー”を披露して、会場を一気に彼女の世界へと引きずり込む。そして次のデビューシングル“カウントダウン”では、Coccoが内にある衝動を完全に解放し、その細い体からは信じられないほどの絶唱を見せる。ご存知のように、ここしばらくの間、少ない曲数のアコースティック・ライブをリハビリ的に行ってきた彼女が、そして5月のJAPAN JAMで、本当に久しぶりに、アコースティックではないバンド・セットでライブをやった彼女が、ここまですさまじい絶唱をライブで聴かせるの、いつ以来だろう。とにかく、「絶唱」という言葉がここまで似合うアーティストはなかなかいない。続いて、彼女の今のモードがはっきりと現れた『エメラルド』からの“ニライカナイ”、“蝶の舞う”を披露。つらいことも悲しいことも全てを全身で受け止めてそれでも希望を歌うこと、それが今のCoccoのモードなのだ。そして彼女は「今日歌う場所があって嬉しいです」と、長い休止期間を経て再び歌えるようになった喜びを口にした後、「一人ではできないけど、人が集まるって大きなパワーになるから、今日のこの空間が、あわよくば広島にも届けばいいなと思います」という言葉に続いて(今日は65年前、広島に原爆が落ちた日だ)、“絹ずれ”を披露した。歌いながらも、歌うことや、今日この場所に来れたことへの喜びが、自然と表情に表れているかのようで、終始顔をほころばせながらマイクに向かっていた。なんとここで、「夏が終わってもまた会いたいと思います」と、秋からツアーを行うことが発表された。まだ詳細は何も決まっていないそうだが、現在の彼女が「歌を届けること」に対して非常に意欲的であることは明らかだ。そして最後は“玻璃の花”をしっとりと歌い上げて、音楽の森に優しい雨を降らせていた。退場の時、「ありがとや」と、最後まで笑顔でオーディエンスに手を振り続ける彼女の姿からは、確かな「次」が存在していることがはっきりと感じられた。(前島耕)