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Cocco、大輪のハイビスカスが咲いたドレスを着て登場。穏やかなその表情から繰り出されたのは最新アルバムの1曲目“燦”。ゆらゆらとそのスレンダーな体を揺らしながら、Coccoの声は恐るべき速さで観客の間を抜けてグラス・ステージの奥まで広がっていき、会場の空気をあっという間に天上の光景に変えてしまった。「このメンバーでライヴをするのは初めてです。みんな仲良くがんばります!」と嬉しそうにCoccoが語る。そう、ギターに長田進、ドラム・椎野恭一、ベースに高桑圭、キーボードは堀江博久というお馴染みのメンバーに加えて、もう一人のギターにはくるりを脱退した大村達身の姿があったのだ。デビュー曲“カウントダウン”での食い入るような目つきと鋭いヴォーカル、昨年の復帰第一作“音速パンチ”で聴かせた、とろけるような恍惚のサウンド。“タイムボッカーン!”では最高にハッピーなシャウトを上げ、観客が手を振って応えている。まるでベスト盤みたいな選曲だ。「この夏にどうしても歌わなきゃいけない歌があって……そう、明日レコーディングします。バンドで演奏するのは初めてです」と言って始まったのは新曲“ジュゴンの見える丘”。「悲しみはいらない 優しい歌だけでいい」という聴くものすべてをそっと包み込む言葉が体の芯まで染みていく。そしてラストの“Never ending journey”のパワフルさには、これまでのCoccoの軌跡を包括し、さらなる高みへと昇華させるようなぞくぞくするエナジーがあふれ出ていた。(林敦子)