リハ中から“カントリーロード”などを情感たっぷりに歌い上げるWATARU.S(Vo/G)。それを聴きつけて、遠くからたくさんの人々がWING TENTに駆け寄ってくる。SCOOBIE DOが作り上げた漆黒のグルーヴはすっかり影を潜め、場内は早くもビタースウィートな空気でいっぱいだ。そして本編スタート。SISTER JETフラッグを掲げてロックンロールにイカレた3人のお出ましだ。「パーティー始めようぜ! R.I.J.はクレイジー!」というMCから1曲目の“恋してクレイジー”に突入する。イエローやピンクのカラフルなスポットライトが照らす中、ザックザクのギターと甘くてふにゃふにゃの歌声がボーイ・ミーツ・ガールの世界をみるみるうちに浮き彫りにしていく。さらに“さよならポケット”“キャラメルフレーバー”と胸キュン・ナンバーが連打されると、場内はすっかりピンク色に。この光景に、「恋がしたいな~」って思わず心の中で呟いた観客は多いんじゃないか。
そして最強のダンス・ナンバー“La La Dance”へ! エッジの効いたパンキッシュなビートに、フロアはハンドクラップの嵐! 嵐! あくまでもシンプル&タイトな3ピースのロックンロールだし、演奏だって歌声だって、どことなく危なっかしい。それなのに、思わず腰を揺らさずにはいられないキラッキラのグルーヴを、まるでマジックのように生み出している3人の姿は、観ていて本当に気持ちいい。さらに“MR.LONELY”へ突入すると、「2010年ROCK IN JAPAN FES.、WING TENTの18時。みんなでブチ壊そうぜ!」と叫ぶWATARU.S。あたたかい歓声で応えるフロア。そうだ。こんなにもラブリーな空間、誰だって忘れるわけがない。2010年8月6日のこの瞬間は、WING TENTを訪れた人々の胸にしっかりと刻み込まれたに違いない。
「せっかくなので最後に出来立ての曲をやって終わりたいと思います。未来とか、過去とか、希望とか、絶望とか、そんなモノたちについての歌です」。そう告げられてラストに鳴らされたのは、ゆったりとしたグルーヴに情感豊かな歌声が乗っかるセンチメンタルなバラード。太陽も沈みかけた夕暮れ時にぴったりの、切なくも優しいメロディでWING TENTが染め上げられたとき、日中の暑さを忘れさせるような涼しげな風がほのかに通り過ぎた。(齋藤美穂)
SISTERJET のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ