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続いて登場するのは、身の回りにあるもの全てを楽器に変える異色のポップ・マエストロ、トクマルシューゴ。
「こんにちは、トクマルシューゴです」という挨拶で、"Platform"の涼やかなアンサンブルが会場を満たしていく。ステージ上には沢山の楽器に囲まれながら円になって構えるメンバー。その佇まいは、まるでおとぎの国の音楽隊のようだ。そのまま流れるように"Tracking Elevator"へ。トクマルが奏でる艶やかなアルペジオ・ギターを中心に、ドラム、アコーディオン、パーカッション、グロッケンシュピールなど、様々な楽器を駆使して鳴らされるカラフルなサウンドに、思わず心が躍る。

その後も、五感のすみずみまで研ぎ澄まされていくようなプレイの連続。音階を自由に行き来するサウンドが耳に楽しい"Lahaha"、ゆったりしたメロディが心地よい眠りを誘う"Linne"、「時間がないのでスピードアップして演奏します」と言ってテクニカルな超速ギターが披露された"the mop"など、幻想的でメルヘンチックなサウンドが目まぐるしく展開していく。なんだか、ページをめくるたびに色彩豊かなイラストが目に飛び込んでくる美しい絵本を眺めているようなワクワク感だ。
80年代を代表するバグルズの名曲"Video Killed Radio Star"を透明感たっぷりにプレイしたあとは、「クライマックス行きます」と"Parachute"を披露。トクマルの技巧的なギター・プレイで観客を大いに沸かせ、ラスト"Rum Hee"の瑞々しいサウンドでSOUND OF FORESTをきれいに浄化してステージを終えた。
まるで、小さな動物や美しい花々で賑わう秘密の楽園に導かれたような魅惑のステージ。「僕の曲は非常に乗りづらいんですけど、乗らなくても楽しいって思ってくれれば嬉しいです」と、トクマルは途中で言っていたけど、この日SOUND OF FORESTに集まった観客たちは、彼の音楽の楽しさをじっくりと堪能できたと思う。その証拠として、1曲終わるたびに会場はあたたかな拍手と笑顔で満たされていた。(齋藤美穂)