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数々の名演の舞台となった今年のSeaside Stageも、残すところあと2組――そんなクライマックスの迫る壇上に、まずは3ピースのバック・バンドがスタンバイして、奔放にジャム・セッションを繰り広げる。次第に熱を高める演奏のなか、ハットと涼しげな衣装でRie fuが登場! 初めてのROCK IN JAPANの舞台を確かめるように、ぐるっと辺りを見回し、オーディエンスからの歓声に手を振って応えてオープニングの"Voice"へ。エレクトリック・ギターを掻き鳴らしながら、穏やか、かつ、切実な歌声を届けるRie fu。テンポ・ダウンしたブリッジ部では傍らのキーボードもプレイし、続く"decay"ではアコースティック・ギターを爪弾いて熱唱。集まったお客さんは高々と腕を掲げて、温かい手拍子を贈っている。そんなオーディエンスに向けて、「ありがとうございます! ホントに夢のような、初ROCK IN JAPAN……ちょうど涼しい風が吹いてきたころなので、心地よいRie fuの風をお届けできたらと思います!」と笑顔で語りかけ、今度はキーボード前に腰掛けて"5000マイル""Life is Like a Boat"と続けざまにプレイ。まるで彼女自身が"音楽そのもの"になったような、自在なヴォーカリゼーションで聴衆を魅了する。ロンドン芸術大学卒の画家としても活躍する才女とあって、ヴォーカル・ラインにせよ、サウンド・プロダクションにせよ、そのすべてが都会的な洗練を帯びていて、Seasideにはそれまでとまったく違った景色が立ち上がっている。とても作家性の高いアーティストだと思う。「初めてこんな素晴らしいステージに立たせていただいて、みなさんありがとうございます! 今日は、私にとってこの夏一番の……今年一番かもしれない思い出になると思います。ちょっと遠いステージまで足を運んでくださって、ありがとうございました」と丁寧に感謝を届けて、ラストには再びアコースティック・ギターを抱えて"ひとつひとつ"をプレイ。その終盤、「ここから、みなさんと一緒に歌いたいと思います!」と呼びかけて、♪ラーララーとみんなで大合唱。「上手ねえ! ありがとう!」と満面の笑みを浮かべ、心地よい一体感のもと初のROCK IN JAPANのステージを終えたRie fu。今月末にはニューヨークでのライブも控え、夏が終わってからも、彼女の描く表現は鮮やかに世界を彩っていくことだろう。(奥村明裕)