青空丸ごとびりびりと震わせながら真っ赤に染め上げていくような“リバース”の絶唱! フライングVを激しくかき鳴らし、髪を振り乱しながら、1曲1曲己の衝動のすべてを振り絞っていくような小林太郎の佇まいは、それだけでも火傷必至のロックの熱量に満ちているが、何よりその、荒れ狂う情熱のままに噴き上がる魂の咆哮そのものの歌が、震えるくらいのスリルと迫力を伝えてくる。Wギターのエッジ感の塊のようなヘヴィ・ロック・サウンドとともに《通れない道はない そんなものは無い》と叫び上げるのは、7月にリリースされたばかりのメジャー1st EP『MILESTONE』収録の楽曲“飽和”。「暑い中ありがとうございます! どんどん健康的に暑くなっていきたいと思うんで……バラードやります!」という言葉の後は、センチメンタルな情感が悲しいくらいに美しい揺らぎを見せていった“美紗子ちゃん”へ。懸命に生きようとするがゆえに生まれる違和感や摩擦や焦燥感――それらを揺るぎないメロディへと編み上げていく小林太郎というアーティストの真髄のような時間が、ここSEASIDE STAGEを熱く満たしていく。
「あと2曲で帰ります!」のMCにたまらず沸き上がるオーディエンスの「えー!」の声。「もっと聴きたい人は、10月に東名阪ワンマン・ツアーやるんで来てください!」と返したところで、さらに『MILESTONE』から“鴉”を披露。粘っこく絡みつくようなハード・ロック・バラードで、反骨心と闘争心が自然発火したような激烈なヴォーカリゼーションを聴かせていく。最後は、身を焦がすような狂騒感とともにロックの彼方へデッドヒートを繰り広げる“安田さん”で圧巻のフィナーレ! 真っ向から照りつけるSEASIDE STAGEの陽射しの中、その歌声はひたちなかの空気を切り裂いて、どこまでも高く、鋭く飛翔していった。(高橋智樹)
小林太郎 のROCK IN JAPAN FESTIVALクイックレポートアーカイブ