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ROCK IN JAPAN FES. 2012最終日、ついに本格的にキックオフするWING TENTに立つのは、クリープハイプ。2001年のバンド結成から10年以上の年月を経て、今年4月にメジャーデビュー。そのタイミングで、ついにRIJF初出演を果たす。定刻になって、SEなしでステージに現れたメンバー。尾崎世界観(Vo&G)の「行きまーす」という一声から“イノチミジカシコイセヨオトメ”の清冽なギター・ストロークが繰り出されると、フロアから沸く大歓声! 聴き手の心をギュッと掴むメロディと、独特の危うさを湛えた尾崎のハイトーン・ヴォイスが、場内に吹き込むそよ風に乗って気持ちよく伸びていく。そのまま“手と手”“愛の標識”と最新アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』の収録曲を畳み掛け、オーディエンスの手を大きく揺らしていく4人。タメを効かせたビートと鮮やかなギターが性急に絡み合うバンドサウンドも、5月~6月にかけて開催された全国ツアーを経て、よりカラフルに磨き上げられているようだ。

「あのさー、毎年この季節がくると情けなさと悔しさでいっぱいになりながら『ROCKIN’ON JAPAN』を立ち読みしてました。でも今年は思い切って買っちゃおうかなと思って ます」――そう尾崎が告げると、フロアから惜しみない拍手が送られる。そして、本邦初公開となる新曲“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”へ。雲ひとつない晴天に恵まれた今日の天気にピッタリな爽快なサウンドスケープの上で「泣き声」「さよなら」「やるせない」といった言葉が届けられるこの曲は、どうしようもない現実にのさばるネガティヴィティを明日へと生き抜くエンジンとしてアッパーに解き放つクリープハイプの真骨頂。さらに“オレンジ”と続けると、WING TENT全体が甘酸っぱいエモーションで溢れ返る。このどうしようもない気持ちを抑えられないとばかりに、ハイジャンプやハンドクラップを豪快に繰り出すオーディエンスが徐々に増幅していく。

「そろそろ終わりの時間に…」と尾崎が言いかけると、フロアから沸き起こる「えー!」の声。曲と曲の間で「がんばれ!」とか「尾崎―!」とかいう声援が頻繁に飛んでいたのも印象的だったが、これこそクリープハイプが幾多の紆余曲折を経験しながらも10年以上にもわたってファンと堅い信頼関係を結んできた証。その強固な共犯関係を、「嘘つき!」「大嫌い!」の絶唱が炸裂した“ウワノソラ”で見せつけると、ラスト“HE IS MINE”で吹き荒れる「♪セックスしよう!」の大合唱!「このクソ暑いのに なんでテントなんだろう?と思ってたけど。アレがしっかり響きわたるように運営側が気を遣ってくれたんじゃないかと思います」と尾崎は言っていたけれど、その言葉どおりのデッカい歓喜に包まれた、痛快なクライマックスだった。(齋藤美穂)