星野源にインタビューするのは僕としてはJAPANでは初めてでした。以前に洋楽誌ロッキング・オンでマーク・ロンソンと対談してもらったり、洋楽ベストアルバム特集でインタビューしたり(対談の時に星野源が選んだ洋楽アルバムはヴルフペックのアルバムで、なんと彼らは今年のフジロックのメインステージのトリ! 確かなセンス!)してはいたのですが、星野源自身の音楽についてじっくりと話すのは初でした。
1時間半の会話の中身は読んでもらったそのままで、アルバム『Gen』がなぜここまでの傑作になったのかを理解するためにこれ以上のテキストはないと言っても差し支えない内容だと思います。表現者として、そしていち人間として星野源がこの6年半の間どういう状況だったのか、そしてその状況をいかにしてそのまま1枚の音楽アルバムに刻んだのか、そのすべてが理解できるのではないかと思います。
ただひとつだけ、インタビュアーとしての心残りがあります。それは、時間切れになってしまって最後の質問ができなかったことです。
その最後の質問は「お化け」についてでした。山崎貴監督の映画『ゴーストブック おばけずかん』の主題歌でこのアルバムにも収録されている“異世界混合大舞踏会”の歌詞に出てくる《おばけ》、そして新曲“暗闇”に出てくる《妖怪》、彼らの存在は一体何を表しているのかを突き止めてこそ、このインタビューは最後までたどり着くことができる、僕はそう思ってインタビューに臨んでいました。でも力足らずで時間切れになってしまってそこにたどり着くことができなかったのです。
このアルバムは『Gen』というタイトル通り、星野源そのものなのだと思います。だからこそ逆に、その作品の隣や背後に漂うおばけや妖怪の存在の意味は大きいと感じます。いや実は、そのおばけや妖怪の存在を含んだ作品が『Gen』なのだと思います。それがこのアルバムの本質であるとすら思います。なぜなら、それが世界の本質なのだから。
このアルバムの“Eureka”にも“喜劇”にも“Sayonara”にも“生命体”にもおばけがいるのを感じます。希望や絶望の世界を眺めていると、そんなこととは関係のない世界からの囁きがふと耳の後ろあたりから聞こえてくる時があります。おばけの声です。それはすべてを失った時やある種のアートに接している時とかに聞こえてきます。そして、このアルバムを聴いている時にも僕には聞こえてくるのです。
その話をいつか、星野さんよろしくお願いします。(山崎洋一郎)
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