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複雑で大胆な意匠によって形作られているが、不思議と透明な印象を受ける1曲である。その美しいメロディが想起させる景色や、独白のような口調で歌われている感情が、とても孤独で、そして純粋なものだからかもしれない。映画『陰陽師0』の主題歌で、同映画の予告映像で曲の一部を聴いた段階ではシンプルな手触りの1曲になるのかと予測していたが、いい意味で予測は大きく覆された。曲自体が映画的とも言えるようなスケールの大きさを持つ、壮大な実験性と尽きぬ表現欲求を感じさせる1曲だ。清廉としたストリングス、深く響くピアノ、繊細に躍動するビート、現れては消え、また現れる饒舌なギター、波のようなベースライン……それらが彩る音楽の物語。雄大な抑揚と激しい展開が描くのは、時間の流れ、というよりはもはや「運命」と呼びうるものかもしれない。ラストにボコーダーボイスが伝える《必ずもう1度逢える》というフレーズに、音楽によって何かを救おうとした作り手の想いを感じる。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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