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小説コンテスト大賞受賞作『白山通り炎上の件』を原作に書き下ろされた楽曲。隙間の多い音像の中で粘り気あるベースラインが腰を揺らすファンキーなエレポップであり、3分強の尺も相まって心地よく繰り返し聴くことができる。のだが、繰り返し聴いているうちに平歌のメロディの種類の多さ、さらにはサビと呼ぶべきキャッチーなメロディの多さ、すなわち曲構成の異質さに気づかされ、慄くこととなる。しかも、プログレッシブとも言うべき進行の中、クライマックスに繋ぐブリッジで音数がグッと絞り込まれるなどダンスチューンとして王道のアレンジが織り交ぜられるため、余計に脳が思考と快楽との板挟みとなり歓喜の悲鳴を上げる。また定番を徹底的にスクラップアンドビルドした曲作りと、《新しい毎日にTake off/いつもの私ごと/全部壊して oh, oh》というラインが象徴するように「新しく生まれ直す自分」をテーマとしたリリックとがリンクするなど、実験性と大衆性にメッセージ性まですべてがつくづく高次に兼ね備わっている。(長瀬昇)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年1月号より)
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