インタビュー=田中大 撮影=CHITO
──自主レーベルのSUPER ((ECHO)) LABELからのリリースが続いていましたが、どういう経緯でそうなっていたんですか?固まった枠の中でまとまって音楽を作るのって窮屈。たぶん、何をやっても許されるポジションにいられていると思う(HIROKI)
NAOTO そんなにプランを立てていたわけではなかったんです。こうしてソニー・ミュージックレーベルズに移籍するまでに自主の期間があったので、「やりたいことをやるなら今だな」という漠然とした感じでした。
──「インディーズで活動します」というような発表はしていなかったですよね?
NAOTO してないです。インディーズになったのは、2023年の“解放カーニバル”のあとからですね。そのあとの“Specter”“Zombie”“三線Punk”がインディーズです。
──会場限定盤の曲だった“Specter”のあとにゲリラリリースしたのが“Zombie”。あれは“Specter”を再構築した曲でしたね。
HIROKI ああいうことができたのも、インディーズの時期だったからかも。実験みたいな感じですよね。
──「Specter(亡霊)からZombie(屍人)へ」というサブタイトルが示す通りの内容でしたよね。端的に言うと、かなりふざけた連作でした。
NAOTO もともと1曲として作ろうとしていたのをふたつに分けたんです。最初はプログレみたいに別々のものがフェイドインしていって、また最初のサウンドの感じに戻っていく……みたいな1曲にしようとしていたんですけど、15分くらいになりそうだったので、「これはちょっとなあ」と。
──アイデアを詰め込むのは、今までもやってきましたよね?
NAOTO はい。『PANIC FANCY』の頃は、1曲の中に5曲分くらい詰め込むようなことばかりやってましたから。
HIROKI 曲の長さは5、6分くらいでしたけどね。
──ORANGE RANGEの音楽の面白いアイデアは、テクノとかクラブミュージックからの影響も大きいのかなと思います。DJが複数の曲を繋ぐ感じに通ずるものがあるので。
NAOTO そうなのかもしれないですね。
──ロックバンドがあまりやらない手法だと思います。
HIROKI 誰かがやりたいと思って作った曲に乗っかっていくのを昔からやってきたので、意識はしてこなかったですけどね。うまくいくこともあれば、そうじゃない時もありますけど、変な感じになっていくのも、それはそれでその曲の答えなのかなと。そこも含めて面白がれるところがあります。
──これまでの軌跡を辿ると、作風の幅がどうかしているバンドであることが本当によくわかります。たとえば “キリキリマイ”でメジャーデビューした時もラウド、ミクスチャーの方向性でやっていくのかと思いきや、すぐに変化球を繰り出してきたじゃないですか。
HIROKI “キリキリマイ”の次の“上海ハニー”は、全然違いましたからね(笑)。固まった枠の中でまとまって音楽を作るのって窮屈だと思うんです。ORANGE RANGEはたぶん、何をやっても許されるポジションにいられていると思うから、すごく幸せですよ。
──ヒット曲があると、そのイメージをファンも求めますし、周囲のスタッフも路線を変えたがらなくなるものですが。
NAOTO メジャーデビューした直後も、スタッフも含めてぶっ飛んでいたんです。メンバーのひとりくらいはキレるやつがいてもおかしくないんでしょうけどね。「なんじゃ、この曲!?」って言って。
HIROKI 家に帰ってからこっそりひとりでキレて、やさぐれ酒を飲んでるやつがいるのかもしれないよ。
NAOTO 怒ってんのをわかってないだけ?(笑)
HIROKI でも、“上海ハニー”で一気に聴いてくれる人が広がった体験も含めて、「やっぱ、いろんなことに挑戦したほうが面白いよね」ってなったのは、あるのかもしれない。
NAOTO 王道のバラードをやった時、逆にそっちのほうが異質に感じられるバンドにもなってるので、それも面白いですね。変なことをしているほうがスタンダードになってる時があるから。
──代表曲に“花”と“SUSHI食べたい feat.ソイソース”が並ぶのって、かなりどうかしています。
NAOTO どっちがウチらにとっての正統派?
HIROKI わかんない(笑)。
NAOTO 一般的な感覚からすると“花”なんだろうけど。
HIROKI 「代表曲は?」って訊かれた人が挙げるのも、ばらけるんでしょうね。
NAOTO 3つの路線くらいに分かれるのかも。
HIROKI “イケナイ太陽”みたいな路線がまずあって。
NAOTO あと、“花”みたいな路線と“SUSHI食べたい”っていう感じ?
HIROKI ちゃんと意味のあるものが求められるところもあるんでしょうけど。
NAOTO ナンセンスな曲はナンセンスですからね。
──ORANGE RANGEの近況に関しては、NAOTOさんとHIROKIさんが作家チームとしてどんどん活躍するようになっているのも面白い動きです。この前も超人的シェアハウスストーリー『カリスマ』に“カリスマさびら”を提供したじゃないですか。もともといろいろ作ってたんですけど、『戦隊大失格』のオープニングテーマのお話が決まって作ったのが今回の曲です(NAOTO)
NAOTO このふたりで作詞作曲を割り振ってやることが多いんですよね。チームとして明確に決めてるわけではないんですけど、先方から「作詞はHIROKIさんで」と言われるんです。
HIROKI 先方から「ORANGE RANGEのあの曲の感じで」というような提示があったりするので、そういう中での遊びをしています。バンドではできないような角度での遊びができるのも楽しいんですよね。
NAOTO “カリスマさびら”は、作家チームの月蝕會議と一緒に作ったので、まさに普段はできない作り方でした。超人的シェアハウスストーリー『カリスマ』の活動の仕方も独特ですからね。「声優さんがやっていて、表には出ないんですけど、ライブとかをやってるんです」という説明をしていただいて、「どういうこと?」ってなるのも含めて楽しかったです。
──チームでの創作に関しては、最近、次々とリリースされているNAOTOさんのソロ名義naotohiroyamaの曲にHIROKIさん、YAMATO(Vo)さんが参加しましたね。
NAOTO はい。「人生でやりたい10のこと」みたいなのがよくあるじゃないですか? そういう感じで「40歳までにやっておきたいこと」がもともとあって、「あれ? もう41やん⁉」って。いろいろバタバタしてたから忘れてたんです。
HIROKI 忘れるくらいの熱量(笑)。
NAOTO コロナ禍の影響もあってDJもできなくなってたんですけど、久しぶりにいろんなオファーをいただくようになって、「あっ、そうだ! 40までにトラックを出すんだった!」って。曲自体は十数年かけてずっと作ってたのがあったんです。
──今後、NAOTOさんのソロにRYO(Vo)さんが参加することもありそうですね。
NAOTO あいつだけは絶対に誘わないです!
HIROKI RYOもこのインタビュー読むだろうから、嘘でも「誘います」って言っておけよ(笑)。あいつ、ショック受けるから。
NAOTO 「やらせてくれ」と言っても絶対に誘いませんよ(笑)。
──兄のYOH(B)さんは?
NAOTO あいつも誘いません!
HIROKI 兄弟揃って誘わないんだ?(笑)
──(笑)。いずれ一緒にやる機会があるのかもしれないですね。
NAOTO はい(笑)。
──(笑)。前のアルバムのリリースから2年半くらい経っていますが、ツアーを毎年やって、フェスとかもたくさん出ていましたし、実はかなり動き続けていましたよね。今までに活動休止したことってありましたっけ?
NAOTO ないかな? お正月の2ヶ月休みとかはあったけど。でも、忙しすぎてどうかなっちゃってた時はありました。今いるこのビル(ソニーのあるビル)でかくれんぼしてたって、ヤマ(YAMATO)が言ってましたね。「忙しすぎて隠れたかった」って。
HIROKI あいつ、棚の上とかに隠れてたよね?
NAOTO 隠れてた! ヤマ、今日、久しぶりにここに来て思い出したらしいです。「俺、ここに隠れてたよ」って(笑)。あの頃は体力もあったし、そういうのも乗り切れたんです。
──ソニーに再び所属することになりましたが、どういう経緯だったんでしょうか?
NAOTO 前のレコード会社から独立したタイミングで、もともと前にソニーに所属していた時期のディレクターさんと話す機会があったんです。「インディーズでやります」って言ったら、「じゃあ、来てよ。ちゃんと焼き肉連れてくから」と。
HIROKI 毎回同じ手法(笑)。
NAOTO 嬉しいお誘いでもあったんです。
HIROKI ソニーから離れてた期間もずっと気にかけてくれていて、ライブにも定期的に来てくれたんです。
HIROKI だから突然降ってきたお話というわけではなかったんです。
NAOTO いろいろお話をして、「インディーズでしばらく自分たちが考えてることをやって、そのあとにまた一緒にやりましょう」ということになりました。
──インディーズの期間は挟みたかったんですね?
NAOTO はい。インディーズでやりたいこともあったので、それも説明したら、「全然いいよ。その期間で準備できることもあるし」ということで、こうなりました。つまり出戻り(笑)。もともといろいろ作ってたんですけど、『戦隊大失格』のオープニングテーマのお話が決まって作ったのが今回の曲です。