Hotline TNTを新宿 NINE SPICESで目撃!


USインディーシーンで最も注目を集めるオルタナティブロックバンド、Hotline TNTがついに日本上陸!  大盛況のうちに日本列島を駆け抜けた初のジャパンツアー。そのセミファイナルとなる新宿公演を観た。

爆発的な熱気を解き放ちながら、キャッチーなリフと繊細なノイズが轟く。そのサウンドにはシューゲイザー、パンク、エモの片鱗が滲み、会場の誰もがどこか懐かしさを覚えた。しかし、それは単なるノスタルジーではなかった。DIY精神に根ざし、USインディーの最前線を突き進む、新しいギターロックの形であった。ストレートでセンセーショナル、そして強烈な余韻を残した一夜を振り返ろう。

昨晩、最初のハイライトとなったのは2曲目の“Protocol”だった。日本のインディリスナーの間でも話題となったアルバム『Cartwheel』に収録されている、90’sシューゲイザーの正統な系譜を受け継ぐナンバーである。徐々に多層的な構造へと変化するイントロから、ウィル(・アンダーソン)のソフトなボーカルが響き渡る展開へ──そのシューゲイザーサウンドに、誰もが自然と体を揺らした。

続く3曲目の“Son In Law”では、一転してキャッチーなポップパンクが炸裂。ノイジーなリフとアップテンポなビートに呼応するように、フロアの熱狂は一気に加速し、観客が飛び跳ね始める。80年代パンクやハードコアをルーツに持つHotline TNTのメンバーも、そのエネルギーに共鳴。パフォーマンスの熱量はさらに上昇し、ライブバンドとしての圧倒的なクオリティを見せつけた。

そして、終始熱量がピークに達していたライブの中でも、最大のハイライトとなったのが“I Thought You’d Change”だった。Hotline TNTを象徴する一曲であり、バンドの音楽性が凝縮されたナンバー。日本での知名度も高いため、オーディエンスの熱狂は凄まじく、楽曲の後半では熱気に応えるようにメンバーが客席へとダイブ。これを合図に、フロア全体でダイブとサークルモッシュが次々と巻き起こった。

その後も新曲を含む充実のセットリストでオーディエンスを魅了し、全国4都市を5日間で巡るという怒涛のスケジュールにもかかわらず、アンコールまで完璧にやり遂げ、熱狂の一夜は幕を閉じた。

rockin'on3月号のインタビューで、フロントマンのウィルはバンドの音楽性について「まさに自分の影響を受けた音楽のごった煮状態」と語っていたが、その言葉を体現するような一夜となった。シューゲイザーを基盤にしたラウドなサウンドの中には、突き抜けたキャッチーさと、歌詞から溢れるプラトニックなエモーションが共存し、絶妙なバランスで息づいている。まさに、「ぼくの考えた最強のロック」を圧倒的なクオリティで形にしていた。そんな音楽への造詣が深い彼らがオーディエンスと強く共鳴するのも納得である。

そんなバンドのライブが盛り上がらないはずがない。会場が文字通りひとつになった45分間だった。(北川裕也)
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