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    ジュリアン・ベイカー&トーレス。10年の時を越えた、夢のアルバムがこれだ! 時代の琴線をストレートに射抜く傑作の魅力、徹底解説

    ジュリアン・ベイカー&トーレス。10年の時を越えた、夢のアルバムがこれだ! 時代の琴線をストレートに射抜く傑作の魅力、徹底解説

    現在発売中のロッキング・オン5月号では、ジュリアン・ベイカー&トーレスの新作ロングレビューを掲載しています。
    以下、本記事の冒頭部分より。



    文=つやちゃん

    ジュリアン・ベイカー&トーレス。この夢のようなコンビの結成を聞いた時、歓喜したインディロックのファンは多いことだろう。23年にリリースしたファーストが第66回グラミー賞で計3部門を受賞した、ボーイジーニアスでの活躍も記憶に新しいジュリアン・ベイカー。さらに、ソロとして通算6枚のアルバムを制作し高い評価を得ているトーレスことマッケンジー・スコット。間違いなく今のアメリカのインディロックを代表するタレントと言ってよいふたりが手を組んだということで、大きな注目を集めている。しかも、先んじてリリースされたシングル“Sugar in the Tank”に顕著だった通り、今回のアルバム『Send A Prayer My Way』はカントリーを解釈した作品なのだ。それがどれほど意義深いものであるか、本記事では解説していこう。

    ことの発端は、ふたりがともにシカゴでライブを行なった16年にさかのぼる。舞台裏で出会ったジュリアンとトーレスは「カントリーアルバムを作ってみないか」という話になり、構想をあたためていくことに。その後、事態が急展開したのはコロナによるロックダウン中だったという。パンデミックのさなか、鬱屈した日々を送っていたふたりはメールで意気投合し、このカントリープロジェクトを具体的に進めていくことを決めたようだ。つまり、そこからわかるのは、決して両者が昨今のカントリーの流行に乗っかった上でアルバム制作に乗り出したというわけではないということだ。そもそもジュリアンはテネシー州生まれで、トーレスはジョージア州で育ち同じくテネシー州に移り住んだという背景がある(その後、現在はNYを拠点に活動)。ご存知の通りカントリーのルーツは南部にあり、それこそレジェンドであるドリー・パートンなどの例を出すまでもなく、テネシー州は多くのスターを生んできた。ジュリアンとトーレスがカントリーをやるのは、ふたりのルーツから考えても妥当な流れだったのだろう。と同時にパンデミックから数年の間でアメリカにおけるカントリーの人気が高まり、自分たちより先に大物アーティストが次々とカントリー作をリリースするのを複雑な心境で見ていたのも事実のようだ。アイデアから実際の制作まで長い期間がかかった作品であるがゆえに、ビヨンセやポスト・マローンといったスターたちが作り上げたアルバムに続く、「遅れてきたカントリーの話題作」と言えるかもしれない。

    さて、アルバム『Send A〜』を聴いていると、いわゆる従来のカントリーとは異なる点に気がつくだろう。冒頭の“Dirt”にしろ、続く“The Only Marble I've Got Left”にしろ、内省的で抑制されたボーカルが際立っている。さらに、カントリーではなかなか使われないような繊細でアンビエントなギターが随所に入り、普段インディロック畑にいる両者ならではの表現が展開される。“Sugar〜”のように、静寂からダイナミックに盛り上がっていくような展開も、まさしくインディロック的と言ってよい。つまり、ジュリアン・ベイカー&トーレスはそのままカントリーをやっているというよりは、抽象化し血肉化した上で自分たちの音楽に昇華させているという印象が強い。その咀嚼力/解釈力には驚くばかりだ。(以下、本誌記事へ続く)



    ジュリアン・ベイカー&トーレスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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