甘美な、あまりに甘美な曲だ。間違いなく2025年のインディロックを代表する曲になるであろう“Sylvia”を聴いていると、郷愁と悲哀の感情が満ち満ちて、ハートがはちきれそうになる。
ボーイジーニアスのジュリアン・ベイカーが、親愛なるトーレスと共にアルバムを作っているというニュースはかねてから報じられていた。USインディを代表する、シンガーソングライターふたりの共作だ。もともとジュリアン・ベイカーはトーレスの才能に惚れ込んでおり、昨年末にはTV出演したうえでライブでもすでにコラボ曲を披露していた。4月にアルバム『Send A Prayer My Way』をリリースする旨がアナウンスされ、いよいよ本格的に動き出す。3月から9月にかけては、ツアーも行なうとのことだ。
“Sylvia”もすごいが、デビューシングルとなった“Sugar In The Tank”も素晴らしい。ふたりの柔らかなタッチの演奏によって構成されたこの曲は、バンジョーとペダルスティールが絡み合う、カントリーの新たな解釈と言ってよい。歴史的に男性中心主義的な側面を持ち、マイノリティに対して排他的な傾向があると理解されてきたカントリーに対し、クィアとして生きてきたふたりが再解釈を挑む。これが、どれだけ意義のある試みか分かるだろうか。
しかも、“Sylvia”にしろ“Sugar In The Tank”にしろ、プロデューサーにはボーイジーニアスとの仕事で名を上げたイルミナティ・ホティーズのサラ・タディンがクレジットされている。ジュリアン・ベイカー&トーレスは、ボーイジーニアスが近年のロックシーンにおいて達成した功績の「その後」を描こうとしているし、先行曲を聴いていると期待がますます高まっていく。すでに公開されている2曲のMVも、ふたりの仲睦まじい姿がたくさん映っていて、観ているだけで泣きそうになるという人も多いだろう。アメリカではトランプが再就任して以降、マイノリティに対する厳しい現実が突きつけられているからこそ、なおさらだ。静かで力強い連帯を示しているふたりの活動は、今年きっと、たくさんの人の背中を押すに違いない。(つやちゃん)
ジュリアン・ベイカー&トーレスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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