ポップ・ミュージックは、希望を描くことから逃れられない。
希望に疑問を投げかけたり、希望をいっそ否定することも、希望を描くことのひとつで、そういう表現もポップ・ミュージックのひとつの形。
でも希望を描くことから完全に開放された音楽、それはポップ・ミュージックではない。
でも、そのポップ・ミュージックではない何かを求める瞬間が生きていく中で確実にある。
illionは、そういう瞬間に確実に寄り添う音楽。
この『P.Y.L』を聴くとそれがよくわかる。野田洋次郎は、RADWIMPSにおいては、極めて嘘の無い形で希望を描くことを背負っている。
現代という時代の複雑さをすべて受け止めながら、新たなポップ・ミュージックのフォルムを模索し、進化し続けていて、それは多くの人の心を撃ち抜き、シーンの中で大きな市場性を持ち、今、大きな実りの季節を迎えている。illionで野田洋次郎は、それをしない。
どこまでそれをしないことができるかを突き詰めている。
そして、それによってたまたま触れることのできた人の心のとても近いところをフワフワと消えることなく浮遊し続ける。
安心させてほしいわけでも、慰めてほしいわけでも、スカッとさせてほしいわけでもないけれど、聴いたことがないような自分のための音楽がどこかにあるような気がしている人は、この『P.Y.L』に手を伸ばしてみてはどうだろう。(古河)