コアなファン以外にも聴かせたい

ザ・ジャム『ファイアー・アンド・スキル』
2015年10月30日発売
ALBUM
ここにきてポール・ウェラー御大のソロ・キャリアが再び活気を取り戻してきた状況を踏まえてか、デラックス・エディションや新装ベストなどリイシュー企画が盛んになっているザ・ジャム関連だが、この6枚組のライヴ盤ボックスは決定打と言っていい。もともとライヴ・バンドとしての評価が非常に高く、実際に多くのツアーをこなして評価を勝ち得ていった人達だけに、レーベルも初期からコンサートを録音しておいたそうで、十分なクオリティの音源がこれだけ残されている。ずいぶんと時間は経ったものの、こうしてじっくり楽しめる機会が訪れたことは本当にありがたい話だ。

オリジナル・アルバムが全部で6枚だったのに合わせ、ロンドン・パンクの震源地となった100クラブにおける最初期のギグから、ウェンブリー・アリーナで行われた人気絶頂時のフェアウェル・ショウまでの6公演の様子は、劇的なサクセス・ストーリーと着実な音楽的成長を重ねながらも一度たりとてシャープさと、何より気品を失わなかった稀有なバンドの輝きを、見事に再現してくれる。自分の中で眠っていたジャム熱が久々に呼び起こされた。(鈴木喜之)