表現者としての覚悟

めいちゃん『Humor』
発売中
ALBUM
1曲目の“ラナ”で威勢よく新しい世界に飛び出し、以降彼の人生や美学、思い描く物語、陰陽様々な感情の中を旅していたかと思えば、聴き終えた時には自分が自分自身の心に帰ってくるような感覚が残った。彼が自分を誤魔化さず、信頼する人と手を取り合い、真摯に音楽を追求しているからこそ、聴き手も彼の音楽に身を預けることができるのだろう。

約2年半ぶりのフルアルバム。田中秀典とPRIMAGICのサポートのもと自身が作詞作曲を担う7曲と、川谷絵音などソングライターからの提供曲の全13曲を収録している。シビアな現実を生きるための方法論を綴ったダーク&ポップソング、ためこんだ心情を吐露する生々しいロック、生配信をきっかけに生まれたオリエンタルなアッパーナンバーなど、多彩な楽曲を畳み掛ける中で特に存在感を放つのは“Bouquet”と“帰り道”のラスト2曲。大切な人の頬を優しく撫でるような、ぬくもりに溢れた歌声が染み入る。前作以上に自身の胸の内を音楽に投影した作品を「ユーモア」と言えるのも粋だ。彼は今作でアーティストとしての可能性を格段に広げた。(沖さやこ)