消えない痛みを鎮めるかのように、確かな体温を持って奏でられる3人のバンドアンサンブル。歌われるのは、弱さも、怒りも、決意も、あるいはそのすべてが混ざり合った混乱すら隠そうとしない、明け透けな言葉たち。これは「治癒」としてのロックミュージックである。Saucy Dogというバンドを、石原慎也という個人を、そして、この時代を生きる私たちすべての「怪物たち」を、癒すためのロックミュージック。映画『スクロール』の主題歌として書き下ろされた新曲“怪物たちよ”は、もう“シンデレラボーイ”だけで語ることはできない今のSaucy Dogの優しさと強さを象徴する一曲といえるだろう。

《麻ロープで首を括り手にする自由よりも／僕らはきっと強くなれるはず／こんな世界でもまだ》――私たちが生きるこの時代、この場所を《こんな世界》と言う石原の筆致には確かな苛立ちを感じるが、彼の眼差しはそこでは終わらない。悲しみと喜びに迷いながら生きる、すべての愚かしくも美しい命と共に、Saucy Dogは素晴らしい明日を探し求める。その為に音が、声が、重なる。（天野史彬）

（『ROCKIN'ON JAPAN』4月号より）

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