このテキストが日の目を見る頃には、全国24公演のホールツアーが千秋楽を迎えているはずのVaundy。そのツアーの最中に発表されたのが、ABEMAの恋愛番組『花束とオオカミちゃんには騙されない』主題歌に起用されたこの新曲“そんなbitterな話”だった。兎にも角にも「巧い！」と膝を叩かずにはいられない、Vaundyのポップ職人ぶりが遺憾無く発揮された楽曲である。曲調としてはど直球の16ビートロックンロールであり、手垢のついた曲調のリスクに晒されかねないギリギリのラインを攻めながら、作曲センスの素晴らしさで捩じ伏せてゆくさまが痛快。決して甘く優しいだけではない恋のリアルに切々としたファルセットで迫りながら、恋する者たちすべてを抱擁する説得力へと着地してみせたコーラス部分の手捌きには溜息が漏れる。また、ルーズなグルーヴ感を押し広げるギターリフやドラムスの音色、ブルーな不協和音で隠し味を添えるピアノ、楽曲をドラマティックに盛り上げるストリングスを適材適所に配置したアレンジも見事で、足すことも引くこともできない完成度に到達している。（小池宏和）

（『ROCKIN'ON JAPAN』2023年5月号より抜粋）

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