【10リスト】Vaundy、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】Vaundy、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
2019年11月に“東京フラッシュ”をリリースして以来怒涛のペースで楽曲を発表、そのたびに支持層を拡大し続けているVaundy。膨大な音楽を吸収し、ジャンルをやすやすと超越するフットワークの軽さと音楽性のバリエーション、幅広いリスナーの心にズバッと刺さるメロディのセンス、歌い手としての豊かな才能と、ステージ上で見せる熱いパッション。SNSやインタビュー記事で見せるそのキャラクターも含めて、Vaundyというアーティストを彩る魅力は数多い。しかし何よりずば抜けているのは、彼の生み出す音楽がどれも圧倒的な普遍性を持っているということだろう。楽曲によってはかなりマニアックだったり実験的だったりするにもかかわらず、最終的にはしっかりポップスとして届くその力はやはり傑出している。ここではそんなVaundyのディスコグラフィから何度でも聴きたい10曲をチョイス。Vaundyのエッセンスを味わい、そのおもしろさを噛み締めてほしい。(小川智宏)


①東京フラッシュ

SNS上に流れたこの曲のビデオクリップがVaundyという「現象」の始まりだった。狙い澄ましたような洗練されたグルーヴ、《東京フラッシュ》という曲名から入るキャッチーなサビ、そして豊かな抑揚を描き出しながら展開する、噛めば噛むほど味わい深いメロディライン。シーンのリアルタイムトレンドにリンクしつつ、Vaundyの大きな武器である歌のインパクトをしっかりと感じさせるこの曲には、ありきたりな表現になるがVaundyの「すべて」があらかじめ装備されていた。たとえばこれがリリースされた当時、Vaundyはまだ今のようにライブをやっていなかったが、その楽曲構造にはライブを想定したかのようなシンガロングパートも織り込まれている。「ラジオでオンエアされる曲を作ろうと思った」というエピソードも含め、そこには最初からはっきりとしたビジョンが宿っていたのだ。

②不可幸力

Spotify PremiumのCMソングとなり、ストリーミングでの再生数がVaundy史上最初に1億回を突破した楽曲。という説明をすると何やらポップなキラーチューンをイメージするが、どうして、この“不可幸力”はディープなVaundy流ヒップホップである。ギターのループと重いビートの上でVaundyがラップするパートから始まるこの曲は初めてVaundyが見せたダークサイドだとも言える。だが、エモーショナルに歌い上げるサビや徹底的に世界を陰鬱で息苦しい場所として描写しながらもそれを肯定も否定もせず「愛」というキーワードでまとめ上げていく歌詞の内容などには、そのダークなムードを突き抜ける強さがあるようにも思う。「世界は悲しみでできている」というのが彼の基本的なアティテュードだが、まさにそうしてできあがっている世界をありのままに見せつけるこの曲には、Vaundyらしさのエッセンスが濃厚に詰まっている。

③僕は今日も

Vaundyのリリース第3弾となった“僕は今日も”。のちにアルバム『strobo』の中で聴いた時も感じたが、彼の他の楽曲とは明らかに違う手触りを持った楽曲である。「歌詞の意味はどうでもいい」とたびたび嘯くVaundyだが、この曲には間違いなく普段は楽曲の中であまりはっきりとは出さない「Vaundy自身」がいる。《母さんが言ってたんだ/「お前は才能があるから/芸術家にでもなりな」と》という冒頭の部分はおそらく限りなく実話に近いものだろうし、《もしも僕らがいなくなって/いても そこに僕の歌があれば/それでいいさ》というフレーズには彼自身の願いのようなものが滲んでいるだろう。照れ隠しなのかなんなのか、そんな歌詞を最後の最後にひっくり返して「あなた」の歌にしてしまうところがいかにもVaundyなのだが。シンプルながらスケール感のあるサウンドはライブで聴くとなおさら凄みを感じさせる。

④怪獣の花唄

『strobo』のリリース直前に先行配信された一曲。横ノリのグルーヴではなく縦ノリのアッパーなリズムで、繊細に物語を紡ぐような歌ではなく、その場にいる全員で合唱できるようなシンプルにしてパワフルなメロディで、ストレートなバンドサウンドや賑やかなホーンの音色とともに放たれるこの曲は、彼の初期のライブからセットリストのクライマックスの一角を担い続けている。秀逸なのは彼がこの曲の歌詞を徹底的に「受け手」の視点で書いていること。正確に言うとアーティストとファンの視点が重なるその一点にフォーカスして《君がいつも/歌う怪獣の歌》という光景を描き出しているところだ。ここにはステージの上からオーディエンスを煽るVaundyと同時に、リスナーとして音楽にロマンを抱くVaundyもいる。その構造自体が胸熱なのだ。

⑤しわあわせ

2021年3月、NHK『シブヤノオト 卒業ソングSPECIAL』でオーケストラの演奏とともに初披露されたのがこのバラード“しわあわせ”だ。“僕は今日も”で描いていたパーソナルな風景を一気に「みんな」のものへと広げるようなスケール感、ラブソングとしても、あるいはVaundyとリスナーの固い絆を歌ったようにも受け取れる歌詞の懐の深さ。《僕の時価総額400円の心臓》というフレーズに見えるVaundyの自己認識がそれを《君の綺麗な心臓》と合わせることで未来が生まれていくんだというメッセージに転化していく冒頭から、壮大なコーラスとともにこれでもかと畳み掛けてフェードアウトしていくアウトロまで、圧巻の4分半はいつ聴いても感動を禁じ得ない。《重なるひびを僕達は/流るるひびも僕達は/思い出すこともなくなって》と現実に冷徹な視線を向けながらもあくまで理想のほうへとひた走るようなこの曲は、Vaundyの芸術に対する誠実さの表れだと思う。

⑥花占い

日本テレビ系列のドラマ『ボクの殺意が恋をした』の主題歌として書き下ろされ、2021年7月5日に配信リリースされたこの曲。Vaundyにとっては初の民放ドラマ主題歌であり、ミュージックビデオもドラマとリンクしたものになっている。のちの“偉生人”や“裸の勇者”でVaundyと物語のタイアップはさらに進化していくわけだが、その端緒となったのも振り返ればこの“花占い”だった。サビから始まり、ハンズクラップ上等の4つ打ちのリズムに華やかなホーンセクションとのっけから盛り上がっていく楽曲の展開はとてもポップス的で、《「そんなことより/恋路の果てにはなにがある」/くだらない話を2人で/しよう》と描き出される恋の風景もとてもみずみずしい。一方で歌い回しはかなりテクニカルで音域も広く、難易度は相当高い。逆に言えばそうしたテクニカルな曲でも堂々とポップスとして提示できるレベルに、この頃からVaundyは突入していったのだとも言える。

⑦踊り子

2021年最後にリリースされた配信シングル。この曲に対してはVaundy自身も制作の段階からかなり手応えと自信を持っていたようで、実際にチャートアクションの面でも彼のキャリアハイを刻む新たな代表曲となった。小松菜奈が出演したMVの反響もいいほうに作用したのだろう。とはいえ、この曲がヒット狙いの仕掛けを施した楽曲かというと決してそうではない。シンプルなルート弾きのベースライン、ドラムマシンの無機質なビート、上物はうっすらギターが聞こえてくる程度で、メロディもどちらかと言えば起伏の少ないものになっている。にもかかわらず頭にこびりつくような中毒性を持ち、一度聴いたらもう一度リピートしたくなるような楽曲に仕立てているところが見事で、抑制を効かせながらも微妙な表情の変化で色彩を描き出していくVaundyの歌唱の素晴らしさもはっきりと伝わってくる。

⑧裸の勇者

Vaundyの熱望でもあったアニメタイアップ、しかも話題作『王様ランキング』の第2クールオープニングテーマということで、かなり力を入れて作ったことが数々の発言からもうかがえる。ブレスからアコースティックギターのコードとともに歌い始められ、そこにバンドサウンドがドラマティックに重なってくる冒頭の展開も、突き抜けるようなサビの疾走感も、90秒のタイトルバックでどれだけのものを見せられるかという気合いの表れだ。そんな曲だからこそ、歌詞の内容はとても本質的なものになった。もちろん『王様ランキング』、とりわけ主人公ボッジに寄り添ったものになってはいるが、ここに描かれる「愛」の、単純な二元論では語れないディープなありようはとてもVaundy的だ。《愛してしまった/全部/降りかかった呪いも/全部》というフレーズは彼の「ポップス」への執念にもつながっている気がする。

⑨恋風邪にのせて

一聴すればわかる「古きよき」ジャパニーズポップへのリスペクトと、スタンダード然とした佇まい。たとえば《目をそらして気付いたの》とか《魔法を唱えるの》の細かい節回しやリズムのサウンドメイキングなど、Vaundyが吸収してきた「ポップス」を2022年の空気に合わせて表現して見せたのがこの“恋風邪にのせて”だ。エッセンスとしてはありながらも彼がこれほど「これ」にまっすぐに向かったのは初めてで、そういう意味ではこの曲もまた「実験作」であるわけだが、そんな意図をはるかに越えて、どうしたって日本人の心に訴求する侘び寂びのようなものがここにはある。トレンドにシンクロするように見せかけてそれを越えた普遍性と強度をもった楽曲を生み出すところがVaundyの才能だが、この曲はその普遍的な側面をさらに強めたような、まさに「一生聴き続けられる名曲」だ。

⑩走馬灯

たとえば“benefits”とか“偉生人”もそうだが、ときおり出てくるVaundyの90年代ロック感。この曲はまさにそのど真ん中である。どこかいなたいリードギターのサウンド、アタックの強いドラムのビート、地味に効いているリズムギターのストローク。そんな王道のサウンドの上で、Vaundyの歌うメロディだけはどこか湿っぽい日本人的な情緒をたたえている。『strobo』のリリース以降、数々のライブを経てきた中でたどり着いたVaundyの新たなスタンダード、というと多少大げさかもしれないが、改めてどストレートな歌心で勝負するようなこの曲にはVaundyというアーティストの最大の武器とは結局なんなのか、というヒントが埋まっている気がする。ちなみに本人は「(難しいから)ライブで歌いたくない。誰かうまい人が歌って」と言っていたが、これがライブで鳴り響いた時の気持ち良さはきっと格別だと思う。


【JAPAN最新号】僕たちは本当に、Vaundyとは誰かを知っているのか? 5つの切り口で迫る、天才が天才たる理由、そのすべて――決定版ロングインタビュー
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