【10リスト】THE ORAL CIGARETTES、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】THE ORAL CIGARETTES、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
奈良県発の4ピースバンド、THE ORAL CIGARETTES。2010年に結成。2012年にはMASH A&R主催のオーディション「MASH FIGHT Vol.1」でグランプリを獲得。以降、期待の新鋭と呼ばれ、怒涛の勢いで駆け上がってきた彼らも、今やアリーナツアーをまわるほどの存在に。そうなり得たのは、彼らが、成長痛に苦しみながらも自らアップデートを繰り返してきたバンドだったからだ。最新シングル『ワガママで誤魔化さないで』は、現時点での、その最たるものである。そこで今回の記事では、バンドのディスコグラフィから「まずはこれを」という10曲をピックアップ。とはいえ、ひとつのバンドの魅力をたった10曲で語るのは少々無理があるので、これを機に、他の曲も深堀りしていってもらえたらと思う。(蜂須賀ちなみ)


① mist...


初の全国流通盤である1stミニアルバム『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』に収録。いわゆる初期曲にもかかわらず、粘着質のボーカル、存在感のあるギターリフ、聴き手を掻き立てるようなビートなど、このバンドの特色は既に発揮されている。歌詞は猥談めいた感じもあるが、《始まりはいつだって/目の前に見えるきれいな人間》という冒頭のフレーズは、今後彼らが音楽を通じて、人間のドロッとした部分を描いていくのだということを示唆しているようだ。


② 起死回生STORY


メジャー1stシングルの表題曲。この頃から「BKW(番狂わせ)」という概念を掲げるようになる。2014年当時の彼らといえば、ワンマンのチケットが早い段階からソールドアウトし、イベントやフェスでさらに人気に火がつき……と上昇気流の真っ只中。バンドシーンをひっくり返してやろうという気概や、自分たちより先に羽ばたいていく同世代のバンドに対しコンプレックスを燃料に驀進していたのだ。イントロからアウトロに至るまで、熱量も情報量も異様に高く感じられるのはそのためである。


③ 嫌い


メジャーデビューからわずか4ヶ月後にリリースされた、1stアルバム『The BKW Show!!』に収録。タイトルのインパクトこそ強烈だが、歌詞を読めば分かるように、ここで描かれているのは単純な憎悪ではない。表裏一体であり、陰陽の境目の曖昧な人間の感情を歌に落とし込むこのバンドの真骨頂といえる楽曲だ。《嫌い》(キライ)と連呼するシンプルな構成の歌メロに対し、バンドサウンドがブロックごとに全然違う動きをしているのも面白い。ライブのハイライトを担うことも多く、2019年3月の横浜アリーナ公演では、アンコールのラストに演奏された。


④ エイミー


シングル表題曲およびリード曲としては初のバラード。2015年4月のリリース当時はこのアプローチを意外に思った人もいたかもしれないが、実はインディーズ期から大切に育てられてきた楽曲である。“エイミー”は元々山中拓也(Vo・G)が初めて特定の相手へ向けて書いたラブソングだったが、2011年の東日本大震災を通じて「大切なものを失うことの怖さ」、「人と繋がれることの大切さ」を改めて実感したことにより、広く発信すべき楽曲なのでは、と考えるようになったのだそう。そこから変化を重ね、懐の大きな楽曲に成長していった。


⑤ 狂乱 Hey Kids!!


山中の声帯ポリープ摘出手術によるライブ活動休止期間中にリリースされた、4thシングルの表題曲。イントロの強烈なギターリフなどオーラル節が健在である一方、リズムからはジャズやファンクの要素も垣間見える。各地のライブハウスやフェス会場で文字通り多数のキッズを狂乱させたこの楽曲だが、「4つ打ちギターロック」と称されるような、典型的なアプローチとはやや離れたところに在る楽曲でもある。そのギャップがとても興味深い。


⑥ 5150


5thシングル『DIP-BAP』の3ヶ月後にリリースされた、6thシングルの表題曲。「5150」とは、米警察の暗号コードで「精神に異常を来し、犯罪寸前の要注意人物」を指す隠語のことであり、ここでは山中自身の代名詞として用いられている。“DIP-BAP”での挑戦的なアプローチが受け入れられ、何をやっても大丈夫だという確信が得ることができて以降、かえって生みの苦しみに苛まれた彼が、内側に抱える闇をそのまま綴ったのだ。《独りで拓けよこの手で》というフレーズには、孤独という名の化け物と闘いながらこれからも音楽をやっていくのだ、という覚悟が表れている。


⑦ トナリアウ


初の日本武道館公演の直前にリリースされた、両A面シングル『トナリアウ/ONE'S AGAIN』。“トナリアウ”は、ファンに対する信頼がそのまま表れたような無垢な楽曲。ストリングスの流麗なメロディを取り入れたミディアムバラードであり、曲調自体もメンバーの演奏も温かみのある仕上がりになっている。因みに、“ONE’S AGAIN”は“トナリアウ”の制作を通じて溢れ出した別の想いが託された楽曲であり、つまり両者は密接な繋がりを持っている。2曲併せてチェックすることをおすすめしたい。


⑧ BLACK MEMORY


8thシングルの表題曲であり、映画『亜人』の主題歌として書き下ろされた楽曲。自分たちの音楽がより幅広い層にまで届いていきそうなタイミングで彼らは、「ダークなものとポップミュージックの中心で響かせる」という野心とともに、バンドと親和性の高い「黒色」を改めて掲げた。歌詞のテーマは、先天性の不条理を背負いながらどう生きていくか、ということ。《Get it up》のコーラスが印象的なイントロは、ライブでは巨大な一体感を生み出すトリガーとなる。


⑨ ReI


東日本大地震の被災地である南相馬を訪れた経験をきっかけに、約2年を費やし制作された楽曲。山中は初めて被災地の様子を見た時、目をそらしたくもなったが、それでもこの気持ちを消化にしよう、歌にしよう、という想いに駆られたのだという。装飾されていないが、丁寧で、鋭くもある言葉選びには、彼らなりの覚悟が滲み出ている。綺麗事ではない「光」を正面から描くことができたのは、これまで彼らが「闇」と対峙するように楽曲を制作してきたからであろう。未来へ繋ぐ意思がサウンドアレンジにおいても表現されていることも特筆すべきポイントだ。


⑩ ワガママで誤魔化さないで


バンドサウンドの枠組みを大胆にはみ出す4thアルバム『Kisses and Kills』を経てリリースされた、9thシングルの表題曲。この楽曲から透けて見えるのは、オーラルらしさとポップさの臨界点スレスレを狙いながら、どこまでも自由に音楽で遊ぶメンバーの姿。ブラスを取り入れた華々しいサウンドもそのテンションによく似合っている。どこまでもワガママに、音楽家・芸術家としてのピュアな欲望をエンジンにしながら、貪欲に創作をしていくのだという決意表明。
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