【10リスト】東京事変、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】東京事変、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
2012年の解散から8年、二度目の閏年=2020年に電撃「再生」を果たした東京事変。日本の音楽シーン屈指の辣腕アーティスト5人が、プロフェッショナルな意匠と不屈の衝動の限りを尽くして挑む、至高のバンドマジック。精緻に編み上げられた妖艶な世界観の中に、大人同士ならではの遊び心と凄味を滲ませながら繰り広げていく、唯一無二のスリルと輝度に満ちた音風景――。再び動き始めた東京事変という名の物語。その表現世界の魅力を、10の代表曲を通して改めて考察する。(高橋智樹)


①群青日和

椎名林檎「雙六エクスタシー」ツアーで実現した椎名林檎(Vo)/亀田誠治(B)/刄田綴色(Dr)/H是都M(Key)/晝海幹音(G)のラインナップが、そのままバンド=東京事変を結成――という事実は間違いなく、2004年のシーンにおけるひとつの痛快な事件だったし、H是都Mの作曲によるこのデビューシングル曲は、ブレーキ壊れた疾走感をも己の表現として統率する未知のバンドの迫力をまざまざと伝えていた。H是都Mの脱退後も、現在に至るまで長きにわたり愛され続けるロックナンバーにして珠玉のライブアンセム。

②透明人間

H是都M&晝海幹音に代わり浮雲(G)&伊澤一葉(Key)が加入して現在のラインナップとなった東京事変の2ndアルバム『大人(アダルト)』収録曲。伊澤がピアノで奏でる3拍子系のアルペジオが、クラップ鳴り渡る爽快なサビの8ビートとモワレ模様を描きながら、《あなたが笑ったり飛んだり大きく驚いたとき/透き通る気持ちでちゃんと応えたいのさ》という椎名の澄んだ歌と眩しく共鳴する。2012年の閏日、解散前最後の日本武道館公演の終幕を、《またあなたに逢えるのを楽しみに待って/さようなら》というこの曲のフレーズが美しく飾っていた。

③OSCA

『大人(アダルト)』まではカバー曲以外の作詞とほとんどの作曲を手掛けてきた椎名が、詞曲ともに浮雲に委ねた4thシングル表題曲。ミディアムテンポの軽快なロックンロールに、浮雲のワイルドかつしなやかなギターさばきと《底無しで癒えない 嬲ろうか/なけなしの羽振りで揺さぶろうか》という独自の詞世界が不穏なエッジ感を与えている。この楽曲が収録された3rdアルバム『娯楽(バラエティ)』では、作曲を全曲メンバーに委ね、椎名は作詞と歌に専念している――という点からも、バンド:東京事変への揺るぎない信頼感が窺える。

④キラーチューン

“OSCA”と同じく『娯楽(バラエティ)』に収められた、伊澤一葉の作曲による5thシングル表題曲。情熱のクライマックスのその先を目指すようなエモーショナルなメロディワークが、《ご覧、ほらねわざと逢えたんだ/季節を使い捨て生きていこう/夜も秋も盗めないよ/貴方は私の一生もの》という椎名の歌詞&熱唱とせめぎ合い響き合いながら、聴く者のセンチメントを抗い難く奮い立たせていく。5人一丸の有機的な躍動感が、その歌とサウンドの隅々にまで息づいていることをとりわけ雄弁に物語る1曲。

⑤能動的三分間

「80年代USのニュージャックスウィング(ブラックミュージックのビートを打ち込み主体で表現するスタイル)を生演奏で」というコンセプトを完全に血肉化&具現化してみせた6thシングル表題曲(4thアルバム『スポーツ』収録)。タイトなグルーヴと絡み合う椎名の艶やかな歌世界はもちろん、《三分間でさようならはじめまして》というフレーズの通り「演奏時間ジャスト3分」(ライブでは3分間カウントつきで)という離れ業までも盛り込んでみせた、バンド音楽のポップアートと呼ぶべきマスターピース。

⑥閃光少女

『スポーツ』の中でもひときわ清冽な加速感に満ちた亀田誠治の楽曲と、《焼き付いてよ、一瞬の光で/またとないいのちを/使い切っていくから》という今この瞬間を生き急ぐような椎名の歌詞が、溌剌と競い合いながら高揚の彼方へ駆け出していく――。「稀代のポップ達人バンド」としても「至上のクリエイター集団」としても、東京事変が刻一刻と音楽の果実を豊かに育んでいく進化の足跡を鮮やかに告げている。この曲では伊澤がキーボードではなくリードギターを担当しているのも、その「バンド感」をいっそう色濃く感じさせる。

⑦女の子は誰でも

《女の子は誰でも魔法使いに向いている/言葉を介さずとも肌で感じているから》という小悪魔的なキュートさが印象的な椎名の歌詞と、ホーンセクション/パーカッション/ハープを加えたビッグバンドジャズ編成(編曲は服部隆之が担当)のグラマラスな響きが融け合う、7thシングル『空が鳴っている/女の子は誰でも』表題曲(5thアルバム『大発見』収録)。バンドという枠組みからも解き放たれ、より自由闊達に創造の翼を広げる東京事変の「音楽家」としての矜持が、そのふくよかな音像に決然とした強さを与えている。

⑧新しい文明開化

メンバー同士の共作曲も増え、ソングライティング面でもバンドならではの関係性が見出せる『大発見』において、共作曲も含め14曲中7曲に作曲者としてクレジットされた伊澤の手による、ソリッドかつアッパーなロックナンバー。すっかりギタリスト然としたプレイを聴かせる伊澤をはじめ、それぞれにキャリアを積み上げてきた強者5人衆が、己のスタイルやスタンスに固執することなく変化の渦に身を投じることで、予測不能なポップの奇跡が巻き起こっていく――そんな東京事変のリアルな磁場を象徴する1曲であることは間違いない。

⑨ただならぬ関係

解散直後の2012年8月リリースのカップリングアルバム『深夜枠』に、当時未発表の新曲として収録された、作詞:浮雲&椎名、作曲:浮雲によるポップナンバー。男と女の「ただならぬ」関係をバンドとオーディエンスの蜜月感に重ね合わせた《その まま ただ/だ き し め て て ずっと/ど こ か で ま じ わって/遇えるかもね》というフレーズも、メンバー5人が無限増殖してオリンピックの入場行進よろしくトラックを闊歩するミュージックビデオも含め、2020年の「再生」への黙示録の如き不思議な存在感を放っている。

⑩永遠の不在証明

「再生」後初の新作『ニュース』に収められた、椎名の作詞・作曲による劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』の主題歌。椎名/亀田/刄田/浮雲/伊澤の鼓動がうねりながらひとつのビートへと昇華され、ポップとアバンギャルドが表裏一体となって匂い立つサウンド越しに《さあ隠し通せよ一層実は真っ黒だろうけど/嘘を吐く方選び台本書き続けるか釈明しようか》と鮮烈なメロディを突き上げる――。時代を彩り時代を揺さぶる「東京事変というアートフォーム」の存在証明が、この楽曲には確かに鳴り響いている。
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