デビュー当初の「テクノポップユニット」から着実に成長を遂げ、それこそ「未来への希望」そのもののようなポップアートを体現し続けている、かしゆか/あ~ちゃん/のっちの3人。積極的にロックフェスに出演してアイドルカルチャーとロックファンの垣根を無効化してきたことも、度重なる海外公演で国境の壁を超えてきたことも、プロジェクションマッピングなど最先端のテクノロジーとのコラボレーションも、すべては
Perfumeのひたむきな冒険心なしには実現できなかったものだ。常に「その先」へ進化を続けてきたPerfumeのスピリットを、その楽曲を通して改めて読み解いていきたいと思う。(高橋智樹)
①エレクトロ・ワールド
メジャー3rdシングルにして“リニアモーターガール”、“コンピューターシティ”から続く「近未来三部作」の第3弾。仮想世界の中で壊れゆく風景を綴った、ポップソングとしてはシリアスな世界観の楽曲ながら、
中田ヤスタカが3人に託した《見えるものの全てが 触れるものも全てが/リアリティーがないけど 僕はたしかにいるよ》という言葉を目映い生命力とともに具現化してみせた3人。Perfumeというユニットのマインドを清冽に印象付けた1曲。
②チョコレイト・ディスコ
2007年のバレンタインデーにリリースされたシングル『Fan Service[sweet]』の収録曲であり、Perfumeの代名詞的ナンバー&DJ必携ナンバーとして愛されているポップ・マスターピース。《計算する女の子》も《期待してる男の子》も極彩色のダンス空間へ導くような躍動感が随所に光る。この曲のミュージックビデオを観た
木村カエラが、自身のラジオ番組でPerfumeを激プッシュ、後のPerfume快進撃のきっかけを作った。
③ポリリズム
リサイクルキャンペーンのCMソングとして、Perfume本人出演CMとともにこの曲をご記憶の方も多いことと思う。ハイパーなダンストラックを軽やかな歌声とダンスで乗りこなし、中盤のポリループの部分も含めたハイブロウな音楽的実験に鮮烈なポップ感を与えてみせたこの曲は、「新しい次元」へと飛び込んでいく3人のイメージを日本中に決定づけた重要曲。この“ポリリズム”でPerfumeは2008年の『NHK紅白歌合戦』に初出演を果たしている。
④Dream Fighter
《最高を求めて 終わりのない旅をするのは/きっと 僕らが 生きている証拠だから》……Perfumeの存在証明と言うべきフレーズを同時に、時代への何よりのエールとして響かせることのできる3人の訴求力を、この8thシングル曲はどこまでも雄弁に物語っている。《このままでいれたら って思う瞬間まで/遠い 遠い 遥か この先まで》と切実さを増した中田ヤスタカの歌詞も、Perfume唯一無二の「聴き手への浸透力」に力点を置いていることが窺える。
⑤レーザービーム
それまでのキュート&ファニーな佇まいから一転、エッジ感に満ちたトラックとともにアグレッシブなダンスアクトを披露、Perfumeの進化の加速度を印象付けた“レーザービーム”。Perfumeのみならず中田ヤスタカ(楽曲)、MIKIKO(振付)含めたスタッフ陣まで一丸となった「チームPerfume」の完成度の高さを如実に伝える1曲であり、3人のさらなる夢への突破力を、言葉以上に切れ味鋭いパフォーマンスに結晶させてみせた決定的瞬間。
⑥Spending all my time
「Perfumeを通して日本をもっと好きになってほしい」と海外進出を志し、レーベルをユニバーサルへと拠点を移したPerfumeの
移籍第2弾シングル表題曲。当初は全曲英語詞だったクールなダンストラック“Spending all my time”に「日本語詞を入れてほしい」と中田ヤスタカにリクエストした、と語っていたリリース
当時のインタビューからは、自らの進むべき道を明確にイメージし切り開こうとする3人の姿が浮かび上がってくる。
⑦STAR TRAIN
結成15周年&メジャーデビュー10周年を迎えたPerfumeが、改めて自身の道程や理想と向き合うような歌詞と、その世界観を1本の映画のように映像化したミュージックビデオが秀逸な“STAR TRAIN”。《誰も見向きもしなくても/肩を組んで笑ってきた/僕らはきっと負けない》と原点を振り返り、《いつだって今が/Wow 常にスタートライン》と「これから」への決意を歌う3人。夢を原動力として新たな夢を追い求めるPerfumeという生き方そのものの1曲。
⑧FLASH
映画『ちはやふる』主題歌として描かれた《花の色が 変われるほどの/永い時の密度に近くて》という和のテイストと、《火花のように FLASH 光る/最高のLightning Game》のコントラストも鮮烈な“FLASH”。J-POP女性グループとして初出演を果たした
「The Coachella Valley Music and Arts Festival 2019」ではこの曲を、ライゾマティクスによるリアルタイムエフェクトとともに披露、ポップの極致と呼ぶべきPerfumeの在り方を世界中にアピールしてみせた。
⑨TOKYO GIRL
パワフルなビートと対照的に隙間を広く感じさせる音像。生々しいくらいビビッドに3人の感情とキャラクターにフォーカスを合わせた歌声。ハイブリッドポップの高密度な祝祭感によってではなく、他ならぬかしゆか/あ~ちゃん/のっちの意志によって、時代の真ん中を闊歩しようとする決然とした美しさ。《踊れ Boom Boom TOKYO GIRL》のフレーズは、メンバーのみならずすべての「日常を闘う者」を鼓舞するようなマジカルな響きを帯びている。
⑩無限未来
通算7枚目のオリジナルアルバム
『Future Pop』収録曲の中でも、精緻に研ぎ澄まされたサウンドデザインとともに「Perfumeというポップアート」の先進性を明確に象徴する“無限未来”。《震える光 瞬く世界が/少しずつ少しずつ》、《ほら飛ぶよ Are you ready?》――雄大な風景の中で強い風を全身に受けながら、たおやかに踊る3人の姿を捉えた同曲のミュージックビデオは、終わりなき未来へと沸き立つPerfumeのチャレンジングスピリットの証そのものだ。