【10リスト】くるり、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】くるり、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
「1996年9月頃、立命館大学(京都市北区)の音楽サークル『ロック・コミューン』にて結成。古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロックバンド。」
オフィシャルサイトのプロフィールで、くるりは自らをそう紹介している。そのとおりというか、確かにほかに言いようがないというか、とにかく、くるりがまさに「音楽の旅」を20年以上にわたって続けて来たこと、そしてその成果を音源として残し続けて来たことが、この「くるりの10曲」のレビューを読んで、改めて(あるいは初めて)彼らの楽曲に触れていただければわかると、思う。
この「10曲」レビューはrockinon.comの恒例企画だが、くるりに関してはそれが『ソングライン』のリリースタイミングだったことが、結果的にとてもよかった気もする。「誰が聴いても代表曲」が膨大にあるバンドだけにどれを入れてどれを落とすか悩んだが、とりあえず、2018年9月の時点で我々が選んだのは、この10曲です。(兵庫慎司)


①東京


1998年10月21日リリースのデビューシングルにして、いまだにライブでイントロのあのギターを岸田繁が弾き始めると歓声とどよめきが湧き上がる、くるりのマスターピース。1997年、第1回フジロックに行った時の思いを岸田が──というエピソードはここ20年で再三語られて来たことなので割愛するが、ギターロック感、ジャズやクラシック等ロック圏外のジャンルも想起させるコード感、「平坦」と「エモーショナル」の振れ幅が激しいメロディ、淡々と綴ることで逆に詩情を宿す歌詞など、くるりを構成する要素の大部分が、既にこの時点で揃っている。この1年前にインディーリリースされた『もしもし』収録のバージョンとはアレンジが異なっている。元のバージョンにはレディオヘッド“Creep”風の「ガコン!」というギターが入っていた、というのは、くるりファンが言いたがるポイント。


②尼崎の魚


“東京”のカップリング曲。ファーストアルバム『さよならストレンジャー』には収録されていないが(この約7年後リリースのベストアルバム『ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER』に収められた)、当時から現在まで根強い人気を持つ曲。「止まりそうに遅い」と「激しく速い」を極端に行き来するリズム、大きなタイム感のギターリフなど、“東京”と並ぶ「くるりの構成要素がもう揃っている曲」。ただし、歌詞は、ここまで「無力感のみ」で書ききった曲は、くるりの中ではめずらしいかもしれない。


③ばらの花


2001年1月リリースの7thシングルで、翌月のサードアルバム『TEAM ROCK』に収録。メロディメーカー岸田繁才能炸裂、その最たる曲と言える。“リバー”や“宿はなし”のような、カントリーやトラッドっぽい方向に寄った作品とは異なる、美しくせつないメロディも書けることをこの曲で証明した。歌詞の最後の《ジンジャーエール買って飲んだ/こんな味だったっけな》というラインは「五感を絶妙に歌にする男」岸田の真骨頂で、後続のソングライターたちに多大な影響を与えた。


④ワールズエンド・スーパーノヴァ


2002年3月リリースの4thアルバム『THE WORLD IS MINE』のリードシングルで、3rd~4thの「くるり・テクノ/ハウス/クラブ接近期」の代表的な1曲。ただし、アッパーで陽性な“ワンダーフォーゲル”とは異なり、リズムもメロディもリリックも、抑制の効いたクールな感触。曲の後半、大サビで爆発的にエモーショナルになり、その後またクールに戻るところまで含めて、この時期のくるりにしか生み出せない曲。この曲も、今でもとてもファンの人気が高い。


⑤ロックンロール


ボーカル&ギター:岸田繁、ベース:佐藤征史、ギター:大村達身、ドラム:クリストファー・マグワイア、つまり『アンテナ』期(2004年3月)のくるりが生み出した最大の功績である。と言いたくなる、00年代の……いや60年代から現在まで含めた日本のロックの歴史に残る大名曲。音楽性、感情、思想、手法、技術など、この時期のくるりが搭載していたもののすべてが、シンプルな8ビートのこの曲にすべて封じ込められている。「曲が終わりそうになると悲しくなってすぐにリピートしたくなる」のが名曲の条件とするならば、くるりの中でトップクラスにそれを満たす曲である、とも言える。


⑥ブレーメン

ウィーンでオーケストラと共にアレンジ&レコーディングした、くるりの歴史の中で重要なポイントとなった7thアルバム『ワルツを踊れ Tanz Walzer』(2007年6月)の収録曲。このアルバムのリードシングルは“ジュビリー”だったが、“ジュビリー”以上にその後も長く愛されて歌い続けられている曲である。「ロックとクラシックを足した」に留まらず「クラシックに接近したら曲の書き方から抜本的に変わった」この時期のくるりを理想的に表している曲であるとも言える。ミュージシャンで、この曲をフェイバリットに挙げる人が多いのも頷ける。


⑦奇跡


2011年6月にワンコインシングルとしてリリースされた曲。平凡な日常にこそある幸せを見つめ、願い、祈るという心の動きが美しく刻まれている。九州新幹線の全線開業を記念して制作され、この時期に公開となった是枝裕和監督の映画『奇跡』の主題歌なので、2011年3月11日以前に書かれたはずなのだが、にもかかわらず、3.11以降にくるりが初めて出した声明として、これ以上のものはないであろう、という歌になっている。


⑧Liberty&Gravity


岸田繁と佐藤征史とファンファン、つまり現在のメンバー編成になってから最初のアルバム、2014年9月リリースの『THE PIER』収録曲。「既存のジャンルを掛け合わせて足し算や掛け算で新しいものを生み出す」のではなく、「既存のジャンルを掛け合わせた結果、足し算や掛け算ではないまったく新しいものがそこに立ち現れる」という、『ワルツを踊れ Tanz Walzer』で会得した手法をさらに推し進めて生まれた、インパクトの塊、というかインパクトそのもののような曲。発表当時「いったいこれはなんなんだ!?」と、ファンもファン以外もザワザワしたのを思い出す。


⑨琥珀色の街、上海蟹の朝


2016年7月のEP。くるりが新しいアクションを起こす時は、たとえば「音楽的にこういう方向に向かった時期だった」とか、「新たにこういう手法を取り入れたタイミングだった」というような具体的な理由があるが、この時期にこのような曲を書いてシングルで出した、その理由や前後の脈絡がまったくわからなかった、おそらく唯一の曲が本作。いわゆる「ベタな歌ものヒップホップ」のフォルムの楽曲であったことにも驚いたし、そしてそれが“東京”や“ロックンロール”と並ぶくるり屈指の名曲になっていることにも、さらに驚いた。今も、この曲が始まると反射的に鳥肌が立つ、というファンは多い。


⑩How Can I Do?


2017年9月20日に配信リリースされたシングルで、同日発売の映像作品『くるくる横丁』に封入された後に、最新アルバム『ソングライン』にも収録。京都市交響楽団からの依頼で“交響曲第一番”を書き下ろした後の作品で、管弦楽アレンジは岸田と徳澤青弦ストリングスによるもの。ストレートでリリカルな歌詞であることも、素直で美しいメロディであることも、言わば「シンプルな歌ものアルバム」となった『ソングライン』全体の方向性とつながっている。


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