【10リスト】マカロニえんぴつ、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】マカロニえんぴつ、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
確かな演奏技術と音楽の知識に裏付けられたセンスと、退屈でこんがらがった日常に向けられるまなざしで描き出される、極上のポップソング。マカロニえんぴつの音楽が特別なのは、そこに僕たちと同じような人間が生きているからだ。ここでは彼らのバラエティ豊かな楽曲のなかから恋のこと、バンドのこと、そして煮え切らない青春のことを歌った必聴の10曲をピックアップ。どれもずっと彼らの代表曲であり続けるだろう、不変の名曲だ。(小川智宏)

※2022/04/19 更新


①ワンドリンク別

ロックファンやバンドマンにはおなじみのライブハウスの「ワンドリンク別」のシステム。音楽とは別物だけど切っても切れないアレを、ふたりの微妙な関係に重ねた初期からの代表曲。マカロニえんぴつのライブでは観客全員での「ワンドリンク別!」というシャウトが響き渡る。その光景を見ていると、これはやっぱりバンドとファンの関係を歌った曲なんだと再認識する。というか、チケット代とドリンク代の500円の関係、「恋ではない」ふたりの関係、ひたすら音楽を鳴らしているバンドとそれを受け取るファンとの関係、はっとり(Vo・G)にとっては全部一緒ということなのだろう。そんな本質が透けて見える曲だ。

②ハートロッカー

デビュー当初のマカロニえんぴつの楽曲には音楽やバンドのことを歌った曲がたくさんあるが、これもそのひとつ。性急な2拍子のリズム、叩くように弾かれる鍵盤とギターのコード、そして《形にならない》気持ちを書き殴るように綴った歌詞にはこれが書かれた当時の心境だろう、焦燥感や前のめりな思いが滲むが、《死んだように生きていたい僕の/やっぱりどうしようもないこんな歌が/あなたの逃げ場になるなら歌うよ》という決定的な一節は、マカロニえんぴつというバンドが音楽をやる動機のいちばん根っこにずっとあり続けている。コーラスにソロに転調に、と盛り盛りのアレンジが聴き応えあり。

③洗濯機と君とラヂオ

元ネタといってもいい“部屋とYシャツと私”を知っている人がマカロッカー(ファンの呼称)のなかにどれくらいいるかは知らないが、これはすべてを言い当ててしまっているくらい最高のタイトルだ。“洗濯機と君とラヂオ”とはつまり日常と恋と音楽、ということである。そして、その3点がつながったトライアングルの真ん中に、マカロニえんぴつはいるということだ。《この恋が この夜が/ずっと前から僕らを/待っていた、待っていたんだ》。というわけで、これは決死のラブソングであると同時にバンドの決意表明でもある。重めのサウンドと散りばめられたサイケデリアを裏打ちビートのサビで軽やかに飛翔させる、パワフルな名曲。

④ミスター・ブルースカイ

はっとりの書くラブソングは決してきれいごとで終わらないところがいい。1stフルアルバム『CHOSYOKU』の1曲目を飾る、3拍子のリズムに乗せて切なく歌い上げられる終わった恋の歌はまさにそれだ。感情の奔流そのもののような分厚いギター、激情の真ん前で淡々と続いていく日常を象徴するようなピアノのスタッカート、《泣いているのは君のせいじゃないから》と強がりながら、《泣いてみたのに/捨て切れないの何でだ》と後ろ髪を引かれまくる心情がリアルな歌詞。バンド一丸となって押し寄せてくるような迫力がある。曲名がエレクトリック・ライト・オーケストラの同名曲から採られているのかどうかは知らない。

⑤レモンパイ

マカロニえんぴつを変えた一曲だと思う。イギリスのポップミュージシャン・ミーカ的なピアノのループとギターのリフを応用しつつ、スキップするような軽やかさで、そんな音の印象とは対照的な煮え切らない想いを滔々と語るというバランスもバンドのポテンシャルを思いっきり体現しているが、特筆すべきははっとりによる歌詞の中身だ。ラップっぽいパートがあったりするのも新鮮だが、《ゴミクズ、くすぶっておりますわ》と自嘲するくらい同じところをぐるぐる回る主人公の想いを、ポンポンと放り投げるように言語化していく感じには、それまで内側を向いていた彼の視点が、一気に外に向いて開けたような印象を受ける。

⑥ブルーベリー・ナイツ

曲名はウォン・カーウァイの映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』から。恋の露頭に迷った女性の主人公の切なくてボロボロの感情を丹念に追っていくはっとりのストーリーテリングが光る(言うまでもなく、ここに描かれる恋の心情は、はっとりのファンに対する想いの裏写しでもあると思う)。そしてその歌を盛り上げるバンドのアンサンブルが素晴らしい。印象的なピアノリフから始まり、抑制しながらもアクセントとして効果的なギター、サビで爆発する感情を表現するコーラスワーク。全てが一体となってスタイリッシュにドラマを生み出している。聴いていると、それこそ一編の映画を見ているような感覚になる。

⑦ヤングアダルト

マカロニえんぴつの、そしてはっとりのテーマソングといっていいだろう。“ヤングアダルト”は紛う方なきマスターピースである。《ハロー、絶望/こんなはずじゃなかったかい?》と夢を見失った世代と時代に優しく語りかけ、そんな世代と時代に向けて《夜を越えるための唄が死なないように/手首からもう涙が流れないように》と音楽を紡ぐ。ここには彼らが誰に向けて、どんな想いを込めて、どんな覚悟でバンドをやっているのかが刻まれている。そして、なぜはっとりがラブソングを書き続けるのかも。《明日もヒトでいれるために愛を集めてる》というのは、そのまま彼が曲を書く理由でもある。

⑧恋人ごっこ

中期ビートルズ的というかオアシス的というか、とにかく思いっきりブリティッシュなサウンドと、マカロニえんぴつ史上でも指折りの珠玉のメロディ。切なすぎる恋の終わりと、そこにとらわれてこんがらがる主人公。楽曲の構成力、歌詞のストーリーテリング、どれを取ってもこれまで彼らが生み出してきたラブソングの最高峰だと思う。《恋人ごっこでいいから》。もう一度、という願いはどうしようもなく情けないけれど、そのなかで何かに気づき、何かを学び、少しだけ前に進む――という姿勢というか人生の考え方を肯定するというのは、はっとりという人の根本思想でもあると思う。だから、この曲のはっとりの、主人公に向けられた視線はどこまでも優しいのだ。

⑨mother

メジャーデビュー作となった『愛を知らずに魔法は使えない』の最後に収められ、このEPの作品タイトルが同曲の歌詞の一節であるという意味で「タイトルトラック」ともいえる“mother”を一言でいうならば、マカロニえんぴつの現時点での「すべて」である。歌詞では“ヤングアダルト”や“恋人ごっこ”の先にある大きな他者への愛を歌い、サウンド面では何層にも折り重なる展開と趣味も経験も注ぎ込んだような濃厚なアンサンブルが、彼らの経験値と深い音楽への愛を物語る。この曲をラブソングと呼ぶとするなら、その愛は恋人でも家族でもなく、すべての人間や世界に向かって開かれているように思える。

⑩なんでもないよ、

基本的にアレンジ盛り盛り、アイディア満載の曲が多いマカロニえんぴつにあって、この“なんでもないよ、”の引き算のサウンドデザインは画期的だし、その曲が新たな代表曲として多くの人に受け入れられたということはそれ以上に画期的。それだけ、メロディと歌詞の普遍的な魅力があるということだろう。R&Bのゆったりとしたリズム感、トラップビート的に刻まれるハイハット、ピアノのメインにここぞという時に入ってくるギター、すべてが丁寧に構築されたサウンドの上で、シンプルな繰り返しのメロディがすっと心に染み込んでくる。最後に結論のように歌われる《君といるときの僕が好きだ》というフレーズは、今までなんとかして自分を愛そうと歌ってきたはっとりの、ひとつの答えだ。


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