※2022/08/26更新
①幻の命
ピアノのフレーズから始まる繊細なサウンド。温かくも冷たくも感じられる歌声。命が終わった瞬間を思わせる歌詞。真っ白な衣装に身を包んだメンバーの姿。しかもそのうちの一人はピエロ――。彼らはシーンに登場するや否や、いったい何者だろうか?という衝撃を多くの人に与えてみせた。この曲が収録されている『EARTH』というアルバムは今でも色褪せない名盤なので、当時のセカオワを知らない人はぜひ聴いてみてほしい。サウンド自体は現在と大幅に異なっているが、世界の光と闇をつぶさに見つめる姿勢はずっと貫かれ続けてきたものである。(蜂須賀ちなみ)
②天使と悪魔
インディーズ1stシングル『天使と悪魔/ファンタジー』に収録。マジョリティに支持されるやり方こそが是なのだとされる世の中の風潮や、善と悪の境目を疑い、この争いは本当に意義があるのだろうかと問いかける彼らのやり方は、この頃から既に確立されていたのだということがよくわかる。≪否定を否定するという僕の最大の矛盾は/僕の言葉 全てデタラメだってことになんのかな?≫と葛藤しながら、それでもセカオワは歌い続けるのだ。(蜂須賀ちなみ)
③スターライトパレード
2011年にメジャーデビューしたセカオワ。破竹の勢いで同年11月には日本武道館ワンマンを行い(しかもソールドアウト)、その翌日には2ndシングルをリリース。その表題曲が“スターライトパレード”だ。セカオワはDJ LOVE以外の3人が作詞作曲をするのだが、この曲ではNakajinのメロディセンスが光っている。やや難解な進み方をするAメロにある独特の浮遊感はFukaseの歌声の良いところを引き立てているし、サビはとにかくキャッチー。ピアノやストリングスの音色も相まって、一気に星空の下へ導かれるような感じがある。(蜂須賀ちなみ)
④Love the warz
メジャー1stアルバム『ENTERTAINMENT』に収録。「正義」に基づき「悪」を排除した結果、そこには何が残るのか。また、そうして生まれた新しい世界は、はたして本当に私たちが望んでいた世界なのか。そういうことが歌われている。膨大な量の言葉を歌うため、この曲ではFukaseが初めてラップに挑戦しており、その言葉を引き立てるように伴奏はリフ主体となっている。“Death Disco”、“ANTI-HERO”、“Re:set”をはじめとしたダークな雰囲気を持つ曲の原点にあたる存在といえるだろう。(蜂須賀ちなみ)
⑤RPG
『ENTERTAINMENT』の次にリリースされた、メジャー4thシングルの表題曲。マーチングバンドによる躍動的かつ壮大なサウンドが、未知の世界に次々と訪れるロールプレイングゲームの世界観を体現している。『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』の主題歌でもあるため、全体的に言葉遣いが平易だが、歌詞の基になっているのは、FukaseとSaoriが大ゲンカをした経験とのこと。それを踏まえると、繰り返される≪怖いものなんてない 僕らはもう一人じゃない≫というフレーズは、メンバー同士の関係性について歌っているように聞こえてグッとくる。(蜂須賀ちなみ)
⑥炎と森のカーニバル
≪YOKOHAMAにある遊園地の「コスモパニック」の非常口が/このパーティーのエントランス≫という歌い出しからワクワクさせられる、2014年発売のメジャー6thシングル表題曲。華やかな管楽器の音色は、前年秋に開催された初のセルフプロデュース野外ワンマン「炎と森のカーニバル」に参加した、東京都立葛飾総合高等学校・吹奏楽部によるもの。カップリングの“ピエロ”も含め、このシングルでは、花火の音や象の鳴き声、Fukaseの心臓の鼓動などが取り入れられている。セカオワにはその他にも楽器以外の音色を使用した曲が多数あるため、それらを探してみるのも面白いかもしれない。(蜂須賀ちなみ)
⑦Dragon Night
※英語版
オランダのEDMプロデューサー/DJのニッキー・ロメロをサウンドプロデューサーに迎えて制作された曲。彼らはこの時期から既に世界進出への野望を語っていたが、その気概は大胆なサウンドメイクからも読み取ることができている。2014年末の『第65回NHK紅白歌合戦』初出場時に披露されたこの曲は、モッズコートを着てトランシーバーを持ちながら歌うFukaseの姿も印象的で、一時モノマネ・オマージュをする人が多数発生する状況に。また、リスナーの空耳を発端にした「ドラゲナイ」というワードも流行し、最終的には「『現代用語の基礎知識』選 2015ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされるまでになった。(蜂須賀ちなみ)
⑧ANTI-HERO
メジャー2ndアルバム『Tree』までとのギャップに、当時驚いた人も多かったのでは。ゴリラズやカサビアンのサウンドプロデュースを手掛けたダン・ジ・オートメイターが参加した“ANTI-HERO”では、ヒップホップのビートが取り入れられており、やはり海外シーンの傾向が色濃く反映されている。ドラムとベースがいない、その代わりにDJがいる、という編成上の特性を活かし、これまでユニークなアプローチを行ってきた彼らだが、この時期からリズムとグルーヴを前面に出した曲が見受けられるようになった。なお、この曲は全編英詞。トレーニングによってネイティブに近い発音を獲得したFukaseのボーカルにも注目だ。(蜂須賀ちなみ)
⑨silent
ドラマ主題歌としてリリースされた(意識的に書かれたという意味で)SEKAI NO OWARI初のクリスマスソングは、改めてクリスマスという日の意味とそこに生きるひとりの人間に注がれる彼らの優しい眼差しを感じさせる。《クリスマスなんて無ければ/いつも通りの何にも変わらない夜なのに/聖なる旋律は雪に溶けて/自分の鼓動が響いている》――真っ白な雪に包まれた静寂の中で、過去に押し込めた気持ちが帰ってくる。そしてその過去の記憶が、たったひとり今ここに生きている自分自身の姿を浮かび上がらせる。それにしてもこの曲のFukaseの歌唱はものすごい。幾重にも塗り重ねられた音を飛び越えて、文字通り語りかけてくるようなボーカルだ。(小川智宏)
⑩Habit
ギターのループが脳を麻痺させそうなトラックに、分類やラベリングをしたがる人間の「Habit」(習性)をバサバサと斬る挑発的な歌詞、そしてシンプルといえばシンプルなのに不定型な譜割りによって極端に難易度が増しているメロディと、ミュージックビデオで見せたあのダンス。すべてがオルタナティブでハイブロー。にもかかわらず、この曲は流行った。それもとんでもないレベルで。なぜかといえばこの曲が僕たちの言いたいことや感じていること、あるいは気づかないふりをしている本音を射抜いたからだ。それってどうなのよっていう出来事や価値観や人間全部にセカオワは刃を突き立て、そして問う。「おまえ、本当にそう思ってる?」。ダークヒーロー・セカオワによる、面目躍如にして革命的な一曲だ。(小川智宏)
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