【10リスト】My Hair is Bad、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】My Hair is Bad、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
刹那的なのに永遠を感じさせ、個人的なことを歌いまくっているのに――いや、だからこそ圧倒的な客観性と普遍性をもっている、それがMy Hair is Badの音楽だ。過去の失恋の切なさも未練たらたらの痛さも、今を生きる衝動も未来への希望も、すべてを音と言葉に注ぎ込みライブハウスで爆音に変える。そんなロックバンドの本懐を、彼らは全力で表現し続けている。すべてがリアル。だからこそ名曲の数々は、何年経とうが、どれだけ大人になろうが、あらゆる人の体験とリンクして胸の奥にくすぶっているものを呼び起こす。自分自身の記憶と向き合いながら聴いてほしい。(小川智宏)

※2022/05/25 更新


①フロムナウオン

My Hair is Badといえばライブ、そしてライブといえば“フロムナウオン”である。今や音源は入手困難、2009年に販売された2曲入り1stデモにのみ収録されている楽曲だ(ちなみにこのデモのもう1曲は“月に群雲”)。でも、この曲は音源で聴いてもあまり意味がない。掻き鳴らすコードに合わせて叫ばれる言葉、いや、もはや言葉に合わせてコードを鳴らしているのかもしれないが、とにかくライブでアドリブで溢れ出る椎木知仁(G・Vo)の叫びが、この曲を常に更新し続けるからだ。一方で決して変わらないのが《今からどうやってきゃいいの?/明日にはどうなってりゃいいの?》というサビの歌詞。椎木がこの曲を作った高校生の時から変わらないこの気持ちが、どこまで売れようが支持されようがマイヘアを走らせ続けている。

②夏が過ぎてく

THE NINTH APOLLOからの初めてのリリースとなったミニアルバム『昨日になりたくて』収録のこの曲には、今に至るマイヘアの原風景があるような気がしてならない。燃え上がる夏が一瞬で過ぎ去ったあとに残る後悔や未練や情けなさや失望。《夏が過ぎてく》と何度もリフレインするこの曲に込められた思いは、季節も年齢も関係なく、椎木が曲を書き続ける理由のひとつであることは間違いないだろう。ギターと歌だけで始まり、ベースが入り、ドラムが入り……だんだんと「バンド」になっていくイントロのアレンジも、マイヘアというバンドの在り方を象徴しているよう。ライブの本編やアンコールのラストで演奏されることも多い、いつだってマイヘアが帰るべき場所がこれだ。

③元彼氏として

たぶんいろいろあって別れたんだろうに、元カノの今カレを勝手にディスり、挙句の果てに《想ってるよ見てるよ ずっと見てるよ》、《嫌よ嫌よも好きなんじゃない》などと抜かす、ろくでもない野郎の歌である。そのろくでもなさをアッパーな裏打ちダンスビートとポップなメロディで歌うというのが最高で、それを歌詞に書いて歌にしてしまうのが椎木という男である。未練をたらたら垂れ流し、都合のいい解釈で自己を正当化し、同じような失敗を何度も何度も繰り返すのは、たぶんそこにいちばん大事なものが眠っているからだ。食べ物は腐りかけがうまいというが、恋愛も似たようなものなのかもしれない。この曲と対になるような、《darling darling/近寄らないで/もう貴方のじゃないから》という“元彼女として”も合わせてどうぞ。

④ドラマみたいだ

どっしりとしたリズムとエモーショナルで重厚なギターリフが気を抜けば倒れてしまいそうなくらい切ない心情を支えてひた走る。ドラマみたいだ、と一瞬思ったあの日、それは本能的に「結末」を予感する瞬間でもあった。終わってしまったドラマを観返すかのように、過去の景色がフラッシュバックする。そして思う《誰かに愛されて/誰かを愛している/何かに気付けなくて/何かを傷つけてる》、《未来を怖がって/昨日を抱きしめてる》という「反省」は真っ正直な椎木の自画像だ。だからこそ《言葉で言わなくちゃってことはね/言えなかった今日も》。過去を刻みつけ、今を形作ってきたあの時の思いをなくさないように歌にする。この曲はMy Hair is Badが音を鳴らし続ける理由だ。

⑤真赤

《ブラジャーのホックを外す時だけ/心の中までわかった気がした》。2015年、いや、2010年代屈指の名文句である。きゃー、《ブラジャーのホック》とか言ってる!とかそういうことではもちろんなくて、重要なのは《心の中までわかった気がした》という部分のほうである。ブラジャーのホックを外す、まさにふたりの関係が一線を踏み越えるその瞬間ですら「君の気持ち、わかるよ」でも「愛してるよ」でもなく「わかった『気』がした」としか言わない、言えない、その感じ。切ないアルペジオに乗せて歌われるこの本音すぎる言葉が、その後疾走するバンドサウンドと主人公が感じる終わりの気配を一層切なくさせる。答えはとっくに見えていたのだ。

⑥恋人ができたんだ

《恋人ができたんだ/本気で好きと思う子なんだ》と始まるこの曲だが、決して新たな恋の始まりを歌ったハッピーな歌ではない。主人公がそう伝える相手は、かつて恋をして、しかし別れてしまった元恋人だからだ。《君の調子はどう?》と語りかけつつ、《出会ってしまった 通じ合ってしまった/それは消せないけど》、《恋は薄まって でも愛はまだ残っているよ》といつまでも心に残り続ける相手に向けて綴られる歌詞は、どんなに叫んでもその人には届かないし、かといって今の恋人にこんなことは口が裂けても言えない。ここに込められた思いは、決して誰にも届かない、届けてはならないものなのだ。それでもとめどなく言葉は溢れ出し、美しいストリングスの音色にのって宙に消えていく。音楽だから解き放つことのできる究極のひとりごとのような曲だ。

⑦いつか結婚しても

マイヘア流のウェディングソングというかプロポーズソングではあるのだが、さすがだなと思うのは《大好きで大切で大事な君には/愛してるなんて言わないぜ》というサビである。恋愛の向こう側にある《なんだかんだ言って僕らは他人で/ああだこうだ言って好きにしたらいいよね》というふたりの関係は、「愛してる」なんて言葉を超えている……いや、超えていたいんだ、と椎木は歌う。これほど真っ当で嘘のない愛のフレーズがあるだろうか。《毎日がなんだか退屈に思えても/毎朝、僕の横にいて》と願う主人公の思いが描き出すのは、言葉や制度や演出で縛るまでもない、当たり前にそこにある1対1の愛の姿だ。それはもしかしたらこれがわがままロマンチスト・椎木の理想なのかもしれない。実際に結婚式で流れることもあるようだが、これを使うのはだいぶかっこいいぜ。

⑧化粧

アルバム『boys』の中でも随一のドラマ性を帯びたミディアムチューンである“化粧”。男性の視点で歌詞を書くとめちゃくちゃ情けなくてだらしなくて、だからこそリアルな本音が溢れ出す椎木だが、“幻”しかり“元彼女として”しかり、女性視点で書かれた歌詞となると途端にとても丁寧で繊細な、言葉や表情の裏の裏の裏に流れる感情のさざなみまでをも両手で掬い上げるような、奥行きのある物語を紡ぎ始める。その中でもこの“化粧”も椎木というストーリーテラーの「本気」を感じさせる名曲だ。報われない恋愛、決して相手が自分のものにはならないということを知りながら、強がって、無理をして、彼と別れた瞬間《曲がり角で 泣き崩れ》る主人公の姿が切ない。揺れ動く感情の間を彷徨うように絶妙なラインを進むメロディも美しい。

⑨味方

その発表時期からしてもコロナ禍の影響があることは確かだが、シングル『love』のリード曲としてリリースされたこの“味方”に込められたメッセージの揺るぎなさは、My Hair is Badにとっても新たな境地を指し示している。《僕は正義にも悪にもなれないけど/誰よりも君の味方だ》、《弱さを見せ合える人がいること/それが二人の強さだ》というフレーズは楽曲の主人公から大切な人へのメッセージであると同時に、その力強い肯定性は「どんなに時代が変わってもあなたのすぐそばにいる」というマイヘアからファンへの宣言にも聞こえる。長い年月をかけて築き上げてきたバンドの音のぶつかり方やメロディをさらに洗練させたサウンドが、アップデートされたマイヘアらしさのど真ん中を射抜き、リスナーとの未来を照らし出す。

⑩歓声をさがして

マイヘア得意の青春アンセム、ではあるが、この曲が持つおおらかさ、優しさ、力強さはそれまでの他の楽曲とはまったく違う手触りを持っている。《どうでもいい》、《なんでもいい》という言葉が象徴する通り、あらゆる迷いや戸惑いをくぐり抜けてたどり着いた「今」に対する絶対的な肯定が、この曲を貫いているからだ。シンバルによるカウントから始まり、ギターリフがけたたましく鳴り、ドカドカとビートが響く、そんなロックの初期衝動そのもののようなサウンドとそうした「大きな」言葉が合わさっていることの意味はことのほか大きいし、テンポダウンして「好きならなんでもいい」と《音楽》やら《YouTube》やらを並べ立てるサビの、抱きしめられるような温かさといったらない。さんざん疑い、葛藤し、探し続けてきた椎木だからこそ歌える、瑞々しい青春讃歌。これはマイヘアの新たなテーマソングだ。


【JAPAN最新号】My Hair is Bad、椎木知仁が語る怒涛の「はじめて」攻勢の舞台裏
マイヘアの今までのお客さんも緊張させちゃう、驚かせちゃうような状況だったからこそ、 いつだって頑張り時だけど、マジの頑張り時だろうなって 現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』6月号にMy Hair is Badが登場! 椎木知仁が語る怒涛の「はじめて」攻勢の舞台裏 …
【JAPAN最新号】My Hair is Bad、椎木知仁が語る怒涛の「はじめて」攻勢の舞台裏
JAPAN最新号 表紙はMr.Children! BUMP OF CHICKEN/SEKAI NO OWARI/清水依与吏×尾崎世界観/星野源/Official髭男dism
4月30日(土)に発売する『ROCKIN’ON JAPAN』6月号の表紙とラインナップを公開しました。今月号の表紙巻頭は、Mr.Childrenです。 そのほかラインナップは以下のとおり。 ●Mr.Children 全国ドーム&スタジアムツアー、ベスト盤リリース、そして新曲“永遠…
JAPAN最新号 表紙はMr.Children! BUMP OF CHICKEN/SEKAI NO OWARI/清水依与吏×尾崎世界観/星野源/Official髭男dism

【10リスト】My Hair is Bad、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする